オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ROMA/ローマ』

Roma, 134min

監督:アルフォンソ・キュアロン 出演:ヤリッツァ・アパリシオ、マリーナ・デ・タビラ

他:金獅子賞、アカデミー賞監督賞アルフォンソ・キュアロン)、アカデミー賞外国語映画賞アカデミー賞撮影賞(アルフォンソ・キュアロン

★★★

概要

1970年代初頭のメキシコの家庭。

短評

感想を言葉にするのが難しいタイプの映画である(そもそも納得のいく文章が書けた経験がない)。そして、自分でもよく分からないまま無性に感動する映画である。物語を見たというよりも情景を眺めたという感覚が強い。監督のアルフォンソ・キュアロンについては、『アズカバンの囚人』以降の大作映画のイメージが強く、これまで彼の作家性に注目することはなかったが、これが彼の原体験であるらしい。他の監督作にどう繋がっているのかは分からなかったが、劇中に出てきた宇宙遊泳のシーンが『ゼロ・グラビティ』の元ネタなのか。

感想

メキシコ家庭の風景を、そこで働く家政婦クレオの中心にじっくりと切り取っている。それは淡々としているようで、ときに優しく、ときに厳しい。映画の終わりに「“リボへ”」というテロップが入るのだが、これはきっとキュアロンを育ててくれた家政婦の名前なのだろう。キュアロンは一家の子供であり、クレオはリボなのだろう。本作に登場する父親たちはどいつもろくな奴ではない。キュアロンは、血の繋がった家族以上に本物の家族だったリボへの感謝を表するために本作を撮ったのではないか。そう考えると、血の流れる激しい光景や犬の糞まで含めて、全てが愛おしい記憶のように思える。物凄く贅沢で個人的な映画である。

モノクロの映像が美しい映画である。この映像だけでほぼ満足できるレベルである。三十郎氏がモノクロを好むのは、情報が適度に整理されて、光と影という本来見るべき要素に集中しやすいという理由があると思う。当然ノスタルジーを煽る効果もあると思うが、本作の映像は非常にシャープであり、過去を閉じ込めるだけでなく未来への繋がりも感じさせる。

トゥモロー・ワールド』や『ゼロ・グラビティ』での長回しはルベツキの趣味だと思っていたのだが、キュアロン本人も長回しが好きらしい(本作ではキュアロンが撮影監督を兼任し、オスカーを獲得している)。ルベツキの長回しは、流れるようにスムーズな動きを見せる大胆なカメラワークが特徴なのに対して、本作の長回しはフィックス、もしくはゆっくりとした横の移動にほぼ限定されている。対象を人物に限定して追いかけるのではなく、人物を含む風景自体を対象として捉え続けている。前者の没入感に対して、後者はとにかく“じっくり”と言葉が似合う。

客観的でリアリティある映像のような、それでいて幻想的な心象風景のような、よく分からないことになっている。劇中で母親が子供たちに手紙を書かせるシーンがあるが、この映画はキュアロンが言葉にできない想いを映像で綴った手紙なのである。というわけで、三十郎氏もこれ以上の言語化は潔く諦めようと思う。他の表現方法を探す気はない。

ROMA

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