オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『FYRE:夢に終わった史上最高のパーティー』

FYRE: The Greatest Party That Never Happened, 97min

監督:クリス・スミス 出演:ケンダル・ジェンナー、エミリー・ラタコウスキー

★★★

概要

史上最高のフェスが史上最悪の失敗に終わる顛末。

短評

Netflixオリジナルのドキュメンタリー映画。史上最高のパーティーになるはずの挑戦……なんてものは最初からなかった。あったのは誇大広告だけである。主催者も参加者も皆阿呆である。同じ阿呆でも踊らない方がマシである。部外者で良かった。

あらすじ

Fyre Mediaというアーティスト予約アプリの宣伝として巨大フェスを開催しようとしたのが事の始まりである。ベラ・ハディッドエミリー・ラタコウスキーらのトップ・モデル10人を起用したプロモーション・ビデオがSNSで大いにバズったところまでは大成功だったが、そこから先はイベント運営の素人ビリー・マクファーランドによる大言壮語と誇大広告の他には何もない。最初から決まっていたかのように、フェスは破滅的結末へと突き進む。

感想

フェスの失敗自体は「さもありなん」。被害者となった参加者に対しても「ざまぁw」という意地悪な感情が先行する。従業員たちは加害者と被害者の両方の側面があるので、問題を認識していながら止められなかったツケを払ったと言えるだろう。気の毒なのは、現地バハマの労働者たちである。彼らに対する未払い給与の総額は25万ドルに及ぶと言うが、これがなんとケンダル・ジェンナーのインスタグラムへの一回の投稿と同じ金額。インフルエンサー稼業のなんとボロい商売であることか。彼女たちは「プロとして仕事をしただけ」なのだろうが、フォロワーたちは本作を観て、いかにいい加減なものが宣伝されているのかを認識すべきだろう。

宿泊は豪華ヴィラと宣伝されていたのが、実際には避難用テントで、当日には雨まで降ってマットレスが濡れている。よく分からないままバスに乗せられた参加者たちが、テントの並ぶ悲惨な光景を目の当たりして「ノ~!ノ~!」と阿鼻叫喚する姿が最高に滑稽だった。彼らは「Uターンして!」と叫ぶが、戻った先にも何もない。預け荷物にはタグが付けられておらず大混乱。夜間灯がないので陽が落ちればホラーの舞台。遂には暴徒化と略奪がはじまり、避難所よりも酷い事態に陥る。当時のアメリカのネットやメディアでも大いにバカにされたそうである。そもそもの原因が見栄や虚飾にあると同情を集めにくいのだろう。

ビリーはどの程度フェスの実現に対して本気だったのだろうか。フェス炎上後の顛末や人格障害扱いされているのを見ると、最初から投資詐欺だったようにも思えるが、どこかで道を間違えたようにも思える。ビリーは見るからにナード臭漂うイケてない青年である。そんな青年が、ビキニ姿の美しいモデルたちに囲まれてパーティーしたり、一緒にビーチを走ってみたりしてたら、勘違いするのも無理はない。それは当然宣伝用の“創られた世界”なのである。虚構を創る側が虚構に飲み込まれたのは皮肉である。

部外として本作を観ると「みんなバカだなぁ」と笑っていられるが、内容の伴わない誇大広告というのは、割と日本でも見かけるのではないか。最たる例の選挙用マニフェストは置いておいて(これは有権者も誇大広告だと認識し、割り引いて考えているだろう)、〇〇フェスと呼ばれるイベントの商品はだいたい広告よりもショボい。招致時とは話が違うオリンピックもよく似ている。映画の予告編にも同じことが言える。イベントが成功しようが失敗しようが、内容の評判が良かろうと悪かろうと、宣伝する広告代理店だけは、イベントの結果が出る前に確実に儲かっている。消費者だけでなく主催者も、悪質な広告にはご用心。

「映画スターのように生き、ロック・スターのようにパーティーし、ポルノ・スターのようにヤる」の乾杯の音頭が面白かった。