オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ユニコーン・ストア』

Unicorn Store, 91min

監督:ブリー・ラーソン 出演:ブリー・ラーソンサミュエル・L・ジャクソン

★★

概要

派遣社員ユニコーンを飼おうとする話。

短評

ブリー・ラーソンが監督と主演の両方を務めたNetflixオリジナル映画。アラサーのラーソンがユニコーン的レインボー・ファッションに身を包んだ姿を見るのはかなり“キツい”が、「別にそれはそれでいいじゃない?」と開き直る強さと優しさを感じる映画である。ただ、良い話のような気もするけど、あまり面白くはないし、監督デビュー作らしくとっ散らかっていてよく分からなかった。

あらすじ

夢であった芸術方面で身を立てられず実家に逃げ帰ったキット(ブリー・ラーソン)。テレビCMに触発されて始めた派遣の仕事は、「雑誌って何か分かる?」「コピー機のコピーボタンは押せる?」「ボタンを押す前に雑誌を乗せられる?」の三つの質問に「イエス」と答えられれば出来る内容である。ある日、彼女に謎のメッセージ・カードが届き、そこに記載された住所に行ってみると、怪しげなセールスマン(サミュエル・L・ジャクソン)がユニコーンを売ってくれると言う。

感想

キットの両親が運営している“エモーショナル・クエスト”という団体が怪しげで、毎日やたらとケールを食べていたり、“真実のサークル”なる胡散臭い儀式までしているのだが、参加者の少女が嘘をついていることを見抜いているシーンは目から鱗だった。嘘とは、第一義的には「事実とは異なること」だが、そこには何かしらの意味が込められていたり、嘘をつく理由があったりする。嘘により救われたり、護られたりすることもある。イマジナリー・フレンドにも同様の役割があるのだろう。キットも両親と同じく、それが嘘であることを受け入れたことになる。

10代の少女みたいな物語をアラサーの女性が演じているというのがミソだと思うのだが(劇中では芸術系の学校から敗走した直後なのでもっと若い?)、やはり見た目は相当にキツい。キュートという言葉では片付けられない“ちょっと無理”なイタさがある。

よく分からなかったのは、キットのユニコーンとの別れが、彼女の少女時代の終わりだけを意味するのかという点。「今までありがとう。もう必要ないよ」で終わりなのだろうか。ユニコーンと別れて、彼女の創作活動も終わりなのだろうか。創作は単なる逃避だけではなかったはずである。映画の後に彼女がどこに向かっていくのか見えなかったが、できれば自身の創造性を捨てることなく、鑑賞者の存在を認識したブラッシュアップを行ってほしいものである。

芸術家という人種は、顔に絵の具ををつけずに画を描くことができないのだろうか。冒頭のキットの顔にはたっぷりの絵の具がついている。あれは単なる演出なのか。それとも、熱中するとタオルを使うことすら忘れてしまう“芸術家あるある”なのか。

今後、彼女が監督としてのキャリアを重ねることがあれば、やりたいことを詰め込んだ原点として評価されるタイプの映画かもしれない。果たして、どうだろう?