オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ポーラー 狙われた暗殺者』

Polar,118 min

監督:ジョナス・アカーランド 出演:マッツ・ミケルセンヴァネッサ・ハジェンズ

★★

概要

引退した殺し屋が命を狙われる話。

短評

マッツ・ミケルセンが、人を殺し、交わり、拷問される。年齢制限に引っ掛かるために全力を尽くしたNetflixオリジナル映画である。全裸で戦う無敵のミケルセンは格好いいが、戦っているシーン以外は恐ろしく退屈でつまらない。“最小限のストーリー”の重要性や難しさを痛感した。やたらとギラギラゴチャゴチャしている演出も、スタイリッシュというよりは古臭く感じる。

あらすじ

退職する従業員(殺し屋)に年金を払いたくない雇用主が、現役の従業員(殺し屋)を放つという荒唐無稽な話である。どう考えても阿呆である。そんな仕事を従業員に任せれば「自分も退職すれば殺される」と気付くので、仕事を放り出して逃げ出すに決まっている(実際に逃げた護衛は正しい)。このビジネスモデルは成り立たない。しかし、従業員は雇用主以上に阿呆なので、なぜか仕事を請けている。解せない。ちゃんと原作があるようなのだが、原作もこんな阿呆な話なのだろうか。

感想

マッツ・ミケルセンR指定アイドル映画である。ミケルセン演じる凄腕の殺し屋ダンカンは、引退を控えて、半ケツをカメラに向けて直腸検査を受け、悪夢を見て犬を撃ち殺し、お隣の美人を気にするといった平穏な田舎暮らしを満喫している。彼が勤務していたダモクレス社は50才定年制のため、彼はまだまだ現役である。追手は容赦なく殺害するし、ベラルーシの娼婦(アナスタシア・マリニナ)やお色気担当の殺し屋シンディ(ルビー・O・フィー)とも激しく交わる。

交わったり、ニッパーでチョキチョキと拷問されたりでミケルセンの肌色と赤色が多めである。三十郎氏は俳優としてのマッツ・ミケルセンが好きだが、彼の裸を見て喜ぶほど好きなわけではないし、ステイサムのように思わず見惚れる肉体美の持ち主というわけでもない。枯れかけなのに色気のあるおっさんというのが本作のミケルセンなので、「そんなに脱がれてもなぁ……」というのが正直な感想である。

戦うミケルセンは格好いいが、それを活かすための工夫がまるで感じられない。「お前ら、マッツ・ミケルセンが好きなんだろ!シブいおっさんが血みどろで戦ってるところを見たいんだろ!」と押し付けられたような気分である。主人公が無敵の強さを発揮するのはよいとして、敵に魅力がなさ過ぎる。そして、弱い。冒頭のチリでの暗殺なんて、スナイパー一人で片付くはずである。それに五人も費やすなんてプロの仕事とは思えない。その五人もシンディ以外はキャラが薄い。殺し屋についてよく知るはずのヴィヴィアン(キャサリン・ウィニック)が、ミケルセンが待ち受ける場所に大した準備もなく乗り込むのも解せない。敵が雑魚だと、彼の強さが引き立たない。

ラストの展開には「なるほど」と納得したが、このサイドストーリーはメインストーリーと上手く絡んでいなかった。ダンカンのカミーユヴァネッサ・ハジェンズ)に対する「気になる」という感情は説明されたが、命を懸ける動機になるとは思えない。もしかして彼女の正体を知っていたのだろうか。

こんな拗らせたストーリーのヘンテコ映画に出てスベるよりも、普通に“最強のおっさん”映画に出演すれば十分だったのでは?

Polar: The Black Kaiser

Polar: The Black Kaiser