オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『イカロス』

Icarus, 121min

監督:ブライアン・フォーゲル 出演:ブライアン・フォーゲル、グレゴリー・ロドチェンコフ

他:アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画

★★★

概要

ロシアによる国家規模のドーピングを告発する話。

短評

アカデミー長編ドキュメンタリー映画賞受賞作である。Netflixはドキュメンタリー部門が強い。ウォッチリストを作成するために評価の高いオリジナル作品を調べてみると、上位のほとんどをドキュメンタリー映画が占めている。ドキュメンタリーの製作者は、他のジャンルよりも出資者を集めづらいといった事情でもあるのだろうか。

あらすじ

内容そのものよりも話の転がり方が面白かった。監督のブライアン・フォーゲルはアマチュア自転車競技者である。彼は、ランス・アームストロングが検査に引っ掛かったことはなかったという事実に着目し、「自分もドーピングして競技に参加し、検査の無意味さを告発してやろう」と企む。そこで助力を仰いたのが、ロシアのドーピング検査機関所長のグレゴリー・ロドチェンコフ。後に明らかになるロシアの国家的ドーピングを主導した重要人物なのである。

感想

最初は『スーパーサイズ・ミー』のように監督が身体を張る実験ドキュメンタリーだったはずが、いつの間にか話が途方もなく大きくなっている。KGBの後継組織FSBまで登場して、なんだかスパイ映画みたいである。「フィクションでもこんなことにはならないぞ」と三十郎氏が驚くのも無理はない。被写体となる現実が、監督を意図を遥かに超えた、まさかの展開を見せるのはドキュメンタリーの強みと言えるだろう。ドキュメンタリーは生き物である。この作品は企画や監督の目の付け所が良かったのではなく(実験の方はほとんど企画倒れになりかけている)、“運”が良かったとしか思えないのが逆に凄い。

本作は2016年の出来事を扱っているが、昨年、ロシアW杯でのロシア人選手たちの走行距離を見て「これはやってますわ……」と思ったのは三十郎氏だけではなかろう。ドーピングは、する者と取り締まる者の永遠のいたちごっこである。三十郎氏は、この問題について選手やコーチの良識に期待するのは的外れだと考えている。禁止するのであれば、禁止する側が防止する義務を負う。

ロシアによる国家規模のドーピング自体は捜査の結果明らかになったものなので、糾弾されて然るべきだろう。しかしながら、それに関与したとされるプーチンやムトコ(当時のスポーツ大臣)への非難についてはグレゴリーの証言だけを基にしており、アメリカによる政治的プロパガンダ色が強い。本作の主張を全面的に信頼するのは危険に思える。

超競争社会のアメリカでは、プロだけでなく学生スポーツにまでドーピングが蔓延しているのはよく知られた話である。傑出した成績を残したアスリートもお薬パワーのおかげである。個人レベルだけでなく組織レベルでドーピングに関与していても何の不思議もない。その上、オリンピックなどはアメリカ企業の広告なしには成り立たず、問題を握り潰す力はロシアの遥か上である。アメリカだって怪しいものである。日本だってどうだか分かったものではない。ドーピングは、成績を向上させられるアスリート本人にとっても、国民の愛国心を煽れる政府にとっても、そして高いパフォーマンスにより大会を盛り上げられる主催者にとっても、バレさえしなければメリットしかないのだから。

ジョージ・オーウェルの引用が上手かった。『1984年』は現代を生きる者にとって必読書と言えるだろう。

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