オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『呪われし家に咲く一輪の花』

I Am the Pretty Thing That Lives in the House, 89min

監督:オズグッド・パーキンス 出演:ルース・ウィルソン、ルーシー・ボイントン

★★★

概要

呪われた家での二人暮らし。

短評

冒頭で幽霊屋敷の話だと明示されて、実際に幽霊も出てくるのに、どういう話だったのか皆目見当がつかず困惑させられる映画である。ほとんど何も起きないし、分かりやすく怖がらせる演出も少ないが、終始不気味な雰囲気に包まれている。観終わった時に「え……何だったの……」と困惑とも恐怖ともつかない奇妙な感覚が後を引く。監督のオズグッド・パーキンスはアンソニー・パーキンスの息子である。

あらすじ

主人公リリー・セイラー(ルース・ウィルソン)は看護師である。彼女は、自宅で死を待つホラー作家アイリス・ブラム(ポーラ・プレンティス)の家に派遣される。ブラムはリリーのことを何故か“ポリー”と呼ぶのであった。

感想

感覚としては虚実入り乱れている印象である。現実の出来事として描いているようにも思えるし、ホラー小説を執筆する過程のようにも思える。本作自体が一つのホラー小説というメタな見方もできる。幽霊のポリー(ルーシー・ボイントン)のボヤけた映像が、顔や身体の向きのいくつか重ねて観客に正体を悟らせないように、本作の焦点も実にボヤッとしている。

ブラム邸で起こる奇妙な出来事は現実なのだろうか。ポリーの存在を現実として、二人の女が彼女に翻弄される物語だとシンプルに考えるのが一番スッキリするが、どうもそれだけではないような余韻と余白が残る。

ブラムがリリーをポリーと呼ぶのは単に呆けているだけかもしれないし、その後の出来事はポリーの正体を知りたくて彼女の登場する『壁の中の淑女』を読んだリリーが小説を現実に重ねているだけかもしれない。ポリーの告白を聞いて文章にしたというブラムの小説は本当なのだろうか。入れ子なのか現実が侵食されているのか。「小説の結末は意図的にボカした」という台詞の通りにさっぱり分からない。

三者ワックスキャップ(ボブ・バラバン)が介在する客観的な事実は、リリーがブラム邸に派遣されたこと、そして最後に屋敷から二つの遺体が運び出されたことの二つ。ブラムがポリーの話を聞かされたように、観客がリリーの話を聞かされたと考えるのが自然だろうか。果たして“物語を紡ぐ家”が次の住人に語り聞かせるのはどちらの話なのだろう。

静謐な作品ながら足音や雨音が効いていた。三十郎氏はホラー映画を観る時にはヘッドホンを使用することにしているが、本作は特に正解だったと思う。