オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『バスターのバラード』

The Ballad of Buster Scruggs, 133min

監督:コーエン兄弟 出演:リーアム・ニーソントム・ウェイツ

★★★

概要

西部開拓時代の六篇のオムニバス。

短評

コーエン兄弟によるNetflixオリジナル作品。どの話もコーエン兄弟らしくユーモラスだったりダークだったりするが、どう捉えたものかよく分からないシュールな六篇のオムニバスである。共通するモチーフは“人の死”だろうか。

感想

第一章は表題作『バスターのバラード(The Ballad of Buster Scruggs)』。馬上で弾き語りし、観客に語りかけてくる愉快なおっさんバスター・スクラッグス(ティム・ブレイク・ネルソン)が主人公。しかし、彼は気のいいおっさんではなく指名手配犯である。超絶早撃ちで人を殺していく彼があまりにも飄々としているので「命の価値が軽いなあ」と笑っていたら、彼の命の扱いは更に軽くて、思わず呆気にとられた。

第二章は『アルドゴネス付近(Near Algodones)』。銀行強盗を企てたカウボーイ(ジェームズ・フランコ)が、完全防備の行員に撃退され、色々あって吊るし首になる。この“色々”の部分に不条理感がある。しかし、彼は吊るし首が妥当な行為をしているわけで、因果応報という気もする。人生ってやつは分からない。

第三章は『食事券(Meal Ticket)』。四肢欠損の役者と世話係の興行師(リーアム・ニーソン)が旅する話である。ここまでのユーモラスな二章に比べて、本章は少しダーク。しかし、「人間なんてこんなもんだよな」と思うところもあり、これはこれで笑える気もする。リーアム・ニーソンが娼婦と交わる時に、役者を後ろ向きに回転させたところが可笑しかった。人間扱いしてなくても見られるのは嫌なのですね(そう言えば『ゾンビランド:ダブルタップ』でもリンカーンに目隠しをしていた)。

第四章は『金の谷(All Gold Canyon)』。老人(トム・ウェイツ)が金を掘る話である。ジム・ジャームッシュ映画のイメージしかないトム・ウェイツがすっかりお爺ちゃんになっていて驚いた。しかし、独特の声は格好いいまま。この話だけ主人公が死なない。運命ってやつはどう転ぶのか分からない。もっともこの話だけ世界が鮮やかで綺麗過ぎるので、死後の世界ということも考えられる。川沿いで土を掘り起こして含まれる砂金を確認する作業の様子が楽しかった。

第五章は『早とちりの娘(The Gal Who Got Rattled)』。この話が最も西部劇っぽい雰囲気がある。また、唯一なるべくしてなった結末という気がする。可愛いピアース大統領が死ななくてよかった。犬を殺そうとするようなアリス(ゾーイ・カザン)は、死なずに済んだはずだけど、死んで然るべきなのである。

最後の第六章は『遺骸(The Mortal Remains)』。馬車での不気味な会話劇である。これまでの話を総括するかのように、馬車の行き先はあの世なのだろう。これまでに死んだ人物に自分の死を認識する余地がなかったように、本章の乗客たちも運命に弄ばれて突然の死を遂げたのではないだろうか。

これといったインパクトはないものの、どの話もウィットに富んでいてニヤリとさせられた。本作の演出通り上質の短編小説を読んだ感覚である。悪戯好きな運命の神は西部に特有というわけではないだろう。三十郎氏も、明日ヘンテコで理不尽な死に方をするかもしれない。生きている内にせいぜい楽しもう。

The Ballad of Buster Scruggs (Original Motion Picture Soundtrack)

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  • アーティスト: カーター・バーウエル
  • 出版社/メーカー: Editions Milan Music
  • 発売日: 2018/11/16
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