オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『シー・ユー・イエスタデイ』

See You Yesterday, 87min

監督:ステフォン・ブリストル 出演:エデン・ダンカン=スミス

★★★

概要

殺された兄を救うために妹がタイムトラベルする話。

短評

SFの皮を被ったスパイク・リーみたいな映画だと思ったら、スパイク・リーがプロデューサーだった。思わず納得である。正直に言うとタイムトラベル関連の描写は全く面白くないのだが、「スパイク・リーの映画は好戦的過ぎてどうもなぁ……」と尻込みする三十郎氏にとっては、SF要素の効果で口当たりがマイルドになっていて受け入れやすかった。

あらすじ

ブロンクス科学高校に通うCJとセバスチャンの二人は、大学の奨学金を得るため、タイムマシンの開発に勤しんでいる(タイムマシンの開発に成功すれば奨学金を貰う必要はないと思う)。二人は見事タイムマシンを完成させる。ある日、逃亡中の強盗犯に間違われたCJの兄カルヴィンが警察に射殺され、彼女は兄を救うために過去に飛ぶ。

感想

タイムマシンの開発に成功するほど超超超超優秀な頭脳を持つ二人だが、その頭脳は研究開発以外の方面には全く活かされない。優秀な科学者の人格に問題があったり、私生活がからっきしダメというのはよくある話である。CJは、セバスチャンの「過去に介入しちゃダメだ」という忠告を全く聞かず、「私が兄を救うの!」と勢いよく時間を旅するが、飛んだ後の行動は計画性も戦略性も欠けている。阿呆レベルである。「私の作った万能マシンなら何でもできちゃうわ!」というノリでは何ともならない。自然科学だけでなく人文科学も学びましょう。

「可哀想だけど、こいつらバカだな」と思いながら映画を観ていたら、ラストの展開で面食らった。CJが数々の失敗を経てもなお過去に飛ぼうとするところで終わる投げっぱなしエンドなのだが、これは問題の解決ではなく、何があろうと問題に立ち向かい続けるという意志表明こそが本作の核心だったと言えそうである。

ラストのCJも後先考えず直情的に過去に飛んでいる。恐らくまた失敗するだろう。それでも彼女は成功するまで戦い続けるだろう。失敗しては学ぶことを繰り返すだろう。それはきっと現実の黒人たちも同じなのである。彼らは繰り返される悲劇に立ち向かい続けなければならない。同時に、CJがその傲慢さを改善しなくてはならないように、黒人たちもまた事件の原因となっている自分たちの行動にも目を向ける必要ある。

この“繰り返し”要素が、タイムトラベルという題材を選んだ理由ではないだろうか。黒人社会で繰り返される悲劇は、「またか!」という既視感溢れる光景になってしまっているのだろう。

社会的テーマを物語に織り込むことには成功していたので、やはりタイムトラベル周りをなんとかしてほしかった。折角バックパックに内蔵できるモバイル型のタイムマシンを使用しているのに、いつも同じ場所からスタートして現場に駆けつけるまでに時間が掛かるのは不自然である。10分しか過去にいられないのだから、少しでも時間を節約しろ。一刻一秒を争う状況なのだから、飛んだ瞬間にタイマーをセットしろ。この辺の粗は「まだまだ学ぶべきことが多い」というラストに繋がっていると考えるべきか。

タイムトラベルものにマイケル・J・フォックスが出演しているのが嬉しい。