オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ソウル・ステーション/パンデミック』

서울역(Seoul Station), 92min

監督:ヨン・サンホ 出演:シム・ウンギョン

★★★

概要

ソウルにゾンビが発生する話。

短評

新感染 ファイナル・エクスプレス』の前日譚である。監督も同じヨン・サンホ。本作のラストでゾンビ化する女(シム・ウンギョン)が、『新感染』で最初に登場するゾンビなのだとか。本作の声優と『新感染』の女優は同じ人である。本作の時点で相当数のゾンビが発生しているので、その続編の冒頭で呑気に暮らしている人たちがいるのは腑に落ちないが、その辺りはご愛嬌ということで。

あらすじ

首に噛み傷を負ったホームレスが彷徨っている。彼は倒れたまま死んでしまい、ゾンビ化する。原因は全く分からない。シンプルなゾンビ映画である。

感想

『新感染』とはゾンビの性質が大きく異なるように思う。『新感染』では、ゾンビがソウルからプサン、つまり北から南へ侵略すると要素があり、それは当然北朝鮮の想起させ、朝鮮戦争のメタファーという見方ができただろう。本作に侵略要素はない。代わりに、『新感染』の主人公がファンドマネージャーだったのに対し、ホームレスや風俗嬢といった社会の底辺に生きる人々が主役という違いがある。つまり、国内問題である。

彼らはどこからともなく現れ、“普通の人”たちから見過ごされるか邪険に扱われるかのどちらかである。ゾンビは彼らを襲うが、襲われてゾンビとなった彼らは怒りをぶつけているように見える。特に、風俗で働くことを強要されている女がゾンビ化し、店の男を襲う直前の表情は、ゾンビの顔というよりも人間としての怒りを感じさせた。この男が店の人間だと発覚するシーンはゾワッと来る。

パンデミックに対応する政府は、助けを求める民衆を“違法な集会の参加者”と断定して制圧する。ここにも助けを求める者に対する無関心が見られる。ゾンビ映画としてしっかりエンタメしているが、それ以上に社会的な問題提起の意識が強い作品だった。

アニメーションとしては、見慣れた日本製のアニメよりも動きがヌルっとしているのが特徴だろうか。ロトスコープっぽい動きである。線や動きに荒さがあり、あまり滑らかとは言えないが、何か狙いがあるのか。それとも技術的な問題なのか。