オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ルディ・レイ・ムーア』

Dolemite Is My Name, 118min

監督:クレイグ・ブリュワー 出演:エディ・マーフィーウェズリー・スナイプス

他:ラジー賞名誉挽回賞(エディ・マーフィー

★★★★

概要

レコード屋の店員が映画スターに登り詰める話。

短評

ルディ・レイ・ムーアという実在のコメディアンの半生を描いた伝記映画である。近年、完全にかつての輝きを失っていたエディ・マーフィが、ノリと勢いで成り上がっていくハチャメチャな男をひたすら愉快に演じている。「歌、ダンス、コメディ、なんでもできるのにどうして売れないんだ!」「時代遅れだからだよ」の苦境に喘ぐ序盤のルディがセルフ・パロディっぽい感じがして、『バードマン』のマイケル・キートンと同じく、この手のキャスティングは抜群にハマる。『ビバリーヒルズ・コップ』の続編も新作もあるらしいので、頑張れ、エディ!

あらすじ

歌もダンスもスタンダップ・コメディも、何をしても売れなかったルディ・レイ・ムーアエディ・マーフィ)が、ホームレスのネタをパクってアレンジし“ドールマイト”なる下ネタ大王的キャラクターを創り上げると、これが大ウケ。順調にレコードの売上を伸ばすルディだったが、映画館で観た『フロント・ページ』に対し「おっぱいが出てこないなんて映画じゃない!」と憤慨。自ら映画製作に乗り出す。

感想

本作を観ると本家の映画『ドールマイト』を観てみたいという欲求が俄然高まるが、きっと三十郎氏の基準だと全然面白くないのだろう。周囲の白人観客には大ウケし、ルディたちがちっとも笑えなかった『フロント・ページ』は、ビリー・ワイルダー監督作である。両者を比較すれば、後者の方が三十郎氏の好みに近いのだろう。しかし、そんな既存の観客層の嗜好を完全に無視して、自分に近い観客のために、自分が面白いと思う映画を自由に作り上げたことこそが彼の功績なのである。彼は、他の誰かが作った道を借りるのではなく、(本人はそんなことを考えてはいなかっただろうが)新しい道を自分自身の手で切り拓いた。前者にしか思えない某ヒーロー映画の黒人よりも、ルディの方が正々堂々と黒人のためのヒーローという感じがする。腹が出ているのを気にしていても、下ネタしか喋らなくても、彼は格好いいのだ。

三十郎氏はドールマイトという映画もルディ・レイ・ムーアという人物も知らなかったため、途中まで本作が実話だと知らずに観ていた。ルディがハチャメチャ過ぎて実話だと信じられないレベルである。感動的な要素もあるが、これだけ“愉快”という方向に振り切れた伝記映画は珍しいのではないかと思う。

映画の製作風景はどの映画で見ても楽しいものだが、本作も例外ではない。ウェズリー・スナイプス演じる監督が「どうやっても迫力が出せない」と諦めたスタント・シーンも、撮影を重ねた終盤のシーンではそれなりに様になるといった進歩が見られるのも面白い。天井が落ちるほど激しいベッド・シーンも笑えるし、細かいことを気にせずに観客を楽しませるための創意工夫や情熱に満ち溢れている。EDロールでは実際の映画の映像が流れるので二度美味しい。脚本の執筆段階では、小難しい社会的なテーマを盛り込もうとする脚本家に対し「それは全部白人どもが悪い」と言い放つ雑さが逆に痛快である。

新聞での酷評を聞かされたルディが、「どれくらい酷い映画なのか観たがるだろう」と返すシーンが好きである。彼は自分の映画を酷い出来だとは思っていないはずだが、この気持はよく分かる。そして、大抵の場合、後悔する。

ラストシーンでのルディの行動が格好良すぎるのだが、あれは実際のエピソードなのだろうか。

Dolemite Is My Name (Music from the Netflix Film)

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ドールマイト絶体絶倫!! コレクション DVD-BOX

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