オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ベルベット・バズソー: 血塗られたギャラリー』

Velvet Buzzsaw, 112min

監督:ダン・ギルロイ 出演:ジェイク・ジレンホール、レネ・ルッソ

★★★

概要

身寄りのない老人が遺した絵画の呪い。

短評

ナイトクローラー』のダン・ギルロイ×ジェイク・ジレンホールのコンビで送る一作だが、残念ながらジレンホールがサイコパスとして八面六臂の活躍を見せることはない。彼はアートの批評家役で、本作はアート業界のゴタゴタを皮肉たっぷりに描いたホラー映画である。それほど怖いとは思わないが風刺が効いていて楽しい映画だった(恐怖は二の次でブラック・コメディの要素が強い)。

あらすじ

アート業界で働くジョセフィーナ(ゾウイ・アシュトン)が、自宅マンションの廊下で死んでいる老人を発見し、マンションの管理人が全て廃棄するように指示されていた老人の作品を盗んで売ろうとしたことから心霊的騒動が巻き起こる話である。老人の名は、ヴェトリル・ディーズ。彼の遺した絵画は、色んな意味で凶暴である。

感想

風刺は分かりやすい。詰まるところ「商業主義に毒された業界人は死すべし」である。悲惨な人生を送ってきたディーズが人知れず描き、誰にも知られることなく処分しようとした作品を、ビジネスのために利用しようとした人間が怪死を遂げていく。三十郎氏は、この種のビジネスを必要悪と認識しているが、本人が表に出す気のない作品まで引っ張り出そうとするのは必要のない悪だろう。有名人の死後に未発表作品が発見されることはよくあるが、それに関わる者も人知れず呪われているかもしれない。

ビジネスにしか興味のない画商ジョンが、ピアース(ジョン・マルコヴィッチ)のアトリエにあるゴミ袋をアートだと勘違いする。他にもスフィアという作品に腕を飲み込まれて失血死したグレッチェン(トニ・コレット)の死体を、美術館に見学にやって来た子供たちがアートだと勘違いして喜ぶ。前者はアートを理解しない商業主義者への批判だが、後者は現代アートへの皮肉なのだろうか。三十郎氏も、美術館に展示されていれば何だってアートだと思い込むレベルの知識と感性しか持ち合わせていない。

絵の中の人物が動くといった“学校の怪談”的描写はありきたりなのだが、絵の具が融け出して人物を侵食する描写は不気味に美しくて良かった。ただ、侵食された人物がアートに取り込まれている姿は、再び“学校の怪談”的である。

アートとは形の残るもの、後世へと受け継がれていく価値のあるものだと思っていたが、生き残った芸術家が砂浜で波に消されてしまう線画を“自分のためだけに”描いているように、他者との共有を意図しない傑作も世の中にはあるのだろう。

プラダを着た悪魔』を観た時にも同じことを考えたが、オシャレな業界で働く人たちは毎日違ったオシャレな格好をしていて大変そうである。それを喜びに感じるような人たちが働くのだろうけれど。

レンホール演じるモーフは、トム・フォードの眼鏡をはじめ、少し手を開いた歩き方に、細かい仕草やリアクション、口角の上げ方に至るまで純度100%のゲイに見えるのだが、彼は意外にもバイ・セクシャルである。おネエっぽいからと言ってゲイだと断定するのは偏見なのか。性は様々である。世界は広い。

受付嬢のココちゃんが可愛いので女優の名前をメモしておこうと思ったら、『ストレンジャー・シングス』のナンシー役ナタリア・ダイアーだった。シーズン3も観たいけれど、観るなら内容を忘れかけているシーズン2までの復習が必要かと思うと少し気が引ける。