オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『スクランブル』

Overdrive, 93min

監督:アントニオ・ネグレ 出演:スコット・イーストウッド、アナ・デ・アルマス

★★

概要

高級ヴィンテージ・カーを盗む話。

短評

「中学生の頃なら格好いいと思えたんだろうなぁ……」という内容の映画。ヴィンテージ・カーを用いた『ワイルド・スピード』といった趣だが、それ故にカーチェイスは迫力に欠けるし、人物描写は壊滅的。「どう?こういうの格好いいでしょ?」みたいな不必要な描写の寄せ集めが一本の映画になってしまった印象である。

あらすじ

世界に二台しか存在しないという1937年式のブガッティを盗み出したアンドリュー(スコット・イーストウッド。眉をひそめた時の表情が父親に似ている)とギャレットの兄弟。ところが盗んだ相手がヤバい奴で、二人は捕まってしまう。「お詫びに他の高級ヴィンテージ・カーを盗んでくるから許して」と強奪計画を始動する。ヤバい奴から盗んだからヤバい事態になったのに、他のヤバい奴から盗んだら堂々巡りになるなんて気にしてはいけない。

感想

高級ヴィンテージ・カーが並び、走る光景は壮観である。しかし、レプリカではない本物を使用したという車を傷つけられない製作上の都合があるのか、壊してしまうと盗んだ意味がなくなるという劇中の都合があるのか、車はただ走るだけである。盗まれた追手も車を傷つけたくないのだろう。車をぶつけてクラッシュさせたり、銃撃を浴びせたりはしない。クライマックスのはずのカーチェイスが、“ただ走っているだけ”というなんとも間抜けなものになっている。これは寂し過ぎる。申し訳程度の銃撃も「万が一当たったらボスに怒られるだろ……」と心配になってしまう。

泥棒パートに窮地がない。敵を欺くためにピンチを装うシーンはあるが、本当のピンチが一つもなく、主人公はいつも余裕しゃくしゃくである。「頭がキレて、運転のテクニックも抜群なんて格好いいでしょ?」みたいなキャラクターに引っ掛かるのは中学生までで、おっさんになると薄っぺらさを感じるばかりか、スカした感じが逆に恥ずかしくすら思える。

スリ師、爆発マニア、走り屋たちの仲間を集めるパートがあるのに、彼らの活躍が極めて薄い。作戦に必要だから登場させたというだけで、物語に全く絡んでこない。泥棒集団というのは仲間意識が重要なのである。主要人物だけで物語を進めてしまうと、簡単に裏切る余地があるのに裏切らないことが非合理的に感じる。アンドリューたちがスキルを見せつけるためだけの不要なシーンを削って、集団プレーとしての泥棒パートを見せてくれればよかったのに。

他にも無駄な描写が多く、作戦完了後にデヴィン(ガイア・ワイス)が一度離脱する必然性が全く見出だせない。悪い女に騙されがちな阿呆弟ギャレットが報われる展開にしたかったのだろうが、もう少し自然なやり方はなかったのか。ラストで敵のボス突っ込んでいくのも車に衝突させられないのは分かっているし、橋を落とす半テロ行為や死人を出すのも泥棒的にスマートじゃない。

とても褒められた出来の映画ではないが、本作にはアナ・デ・アルマスが出演している。これが最も重要である。むしろそれ以外に重要なことなんて一つもない。高級ヴィンテージ・カーの輝きも彼女の前では完全に霞んでしまう。人質に取られる主人公の恋人なんてチンケな役ではなく(人質に取られてからの仕事はあるが)、主人公兄弟が人質に取られて彼女が車を盗む映画にすればよかったのに。

スクランブル(字幕版)

スクランブル(字幕版)