オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『トリプル・フロンティア』

Triple Frontier, 125min

監督:J・C・チャンダー 出演:ベン・アフレックオスカー・アイザック

★★★

概要

元精鋭の退役軍人たちが麻薬カルテルの資金を強奪する話。

短評

欲をかいて失敗する系の犯罪映画。ベン・アフレックオスカー・アイザックチャーリー・ハナム(彼らからは少し落ちるが、ペドロ・パスカルギャレット・ヘドランド)と豪華なキャストが揃ったNetflixオリジナル映画である。出演者の豪華さに比して監督に小物感があるのがNetflixの特徴だと思うのだが、本作のJ・C・チャンダーは、作品数は少ないもののそれなりに実績がある(『アメリカン・ドリーマー』は三十郎氏も観たことがある)。終盤の展開にもう一捻り欲しかったが、手堅く仕上がっていたように思う。

あらすじ

サンティアゴオスカー・アイザック)が、かつての仲間たちに麻薬カルテルのアジトを襲撃する計画を持ち込む。元は偵察任務だったが「警備がガバガバだから自分たちでやっちまおうぜ」と強奪を仕掛ける。ここまでは元特殊部隊を実力を遺憾なく発揮し、首尾は上々である。問題はその後。アジトに隠されていた金が想定よりも遥かに多く、また金に目が眩んだ隊員は「こんなに金があるのに残して行けるか!」と欲をかく。脱出が遅れ、ヘリで運ぼうにも過積載。完璧かつ楽勝な強奪計画の歯車が狂っていく。

感想

強奪シーンは楽しい。無駄のない動きで警護を始末するのは格好いいし、“家が金庫”という言葉を手掛かりに隠された金を見つけるのも爽快感がある。「特殊部隊!麻薬カルテル!強奪!」と魅力的な設定が詰まっているが、その設定は序盤だけで消化され切ってしまう。金を運ぶロード・ムービーこそが本作の軸なのである。麻薬カルテルとの死闘を期待すると物足りないが、麻薬カルテルとは関係なく追い詰められていくという展開は、皮肉が効いていて面白かった。敵は己の中にあり。

彼らが判断を誤ったのはどのタイミングだろう。トム(ベン・アフレック)が「もっと運び出したい」と駄々をこねた時か。それともヘリコプターから捨てる金をケチった時か。墜落後に農民との戦いを回避できなかった時か(南米の奥地で農民が育てている作物と言えば……が笑える)。ラバを放棄した時か。どうせ全部は運べないと金で焚き火をした時か。考えてみれば、たくさんの小さなミスが積み重なっている。

ヘリで山を越えられていれば何の問題もなかったわけで、「少しでも多くの金を」という気持ちがそもそもの原因。しかし、その後は損切りに失敗している。「金を諦める」という判断も上手くできていない。彼らは敵の殲滅にかけては有能であっても、金の絡んだ判断にかけては無能である。だからこそ退役後、経済的に恵まれない生活を送っているのだろうか。そもそも従軍自体が経済的には間違った判断だと示唆しているようで皮肉である。

人物描写は不完全燃焼。純粋なアクション映画ならこれで構わないが、男たちのドラマ主体のアクション映画としては物足りない。トムの作戦参加の背景を、上手く行かない仕事や娘との関係のようなエピソードとして描いたように、サンティアゴによる勧誘の理由にも台詞だけではなくエピソードが伴うべきだった。退役後の生活に対する不満、自分向きの仕事に復帰する高揚感、仲間との信頼と不信といった要素にもっと深く切り込んでいれば、より魅力的な映画になっただろう。

戦闘シーンの中では、アジトに戻ってきた警護の車を射撃し、味方が待ち構えている場所に誘導して始末する連携プレーが素敵だった。こういう精鋭アピールの演出がもっと多ければ、後の仲間割れや内輪揉めから感じられる“焦り”との対比になっていただろう。

ベン・アフレックがあそこまで重そうじゃなければ、もう一袋くらいは運べただろうに……。

Triple Frontier (Original Motion Picture Soundtrack)

Triple Frontier (Original Motion Picture Soundtrack)