オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『フラクチャード』

Fractured, 100min

監督:ブラッド・アンダーソン 出演:サム・ワシントン、リリー・レーブ

★★

概要

病院から妻子が消える話。

短評

“分かりやす過ぎる伏線はミスリード”。これはある種の前提条件として多くの観客に共有されているように思う。そこで、どんでん返しタイプの映画は、観客を上手くミスリードするか、ミスリードに気付かせた上で更にひっくり返す必要がある。本作は、ミスリードに気付かせた上でひっくり返さない。衝撃の結末のはずが予想通りの結末という残念な結果である。話自体も他で見たことがあるような、使い古されたネタという印象を受けた。

あらすじ

犬にビビった娘ペリ(ルーシー・カプリ)が工事現場で転落し、治療のため病院に連れて行く。妻ジョアン(リリー・レーブ)がペリに付き添ってCT検査室に入ったので、夫レイ(サム・ワシントン)は待合室で待機するが、いつまで経っても帰ってこない。病院のスタッフを問い詰めても「レイは一人で病院に来た」と返すばかり。妻子が消えた。この病院では何かが起きている。

感想

映画の序盤に転機がある。転落するペリを追って自分も飛び込んだレイが、頭を打ち目覚めた後に、じっくりと深呼吸する。一種の空白である。その後の彼が、事故前に喧嘩していた妻から求められていた“かつての彼の姿”へと変貌するため、このタイミングで何か起こったことがはっきりと分かる。事故の衝撃からダイレクトに繋がっていれば錯乱状態で説明がつくが、完全に一呼吸置いたために、イベントの発生を明確に示唆してしまっている。

病院のスタッフたちの怪しげな態度。臓器売買を示唆する描写。これは明らかに分かりやす過ぎる伏線である。つまり、どう考えてもミスリードである。従って「病院の裏で陰謀が渦巻いているという結末だけはないな」という確信を持って映画を観ることになる。「その通り!病院の陰謀と見せかけて実は病院の陰謀ではありませんでした!」とワンクッション置きつつひっくり返されても、全く驚きはない。そもそも主人公も頭を打って錯乱している可能性があるので(それがオチではなかったが)、「“信用ならない語り手”がそのまま嘘つきでした」なんて結末は予想通りにも程がある。

唯一騙されたのは、レイが頭を打って盲聾しているシーンで「モンローさん、残念です。二人とも死亡しました」という台詞が流れるもの。一応レイが死後の世界であたふたしている可能性も考慮してみたが、これがオチなら盛大にネタバレするバカはいない。そんな奴がいれば、即刻廃業すべきレベルの能無しか、世界をひっくり返すレベルの鬼才である。これはレイが過去に掛けられた言葉であることが明らかになるが、上手くミスリードすると言うよりも、観客が本来注目すべき焦点をボカしてしまっただけだったように思う。挿入するタイミングにもう少し工夫があれば。

バーボンのミニボトルとコーヒーを一緒に映した上で、次のシーンでコーヒーを飲んでいる演出は上手いと思った。