オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『アイ・アム・マザー』

I Am Mother, 113min

監督:グラント・スピュートリ 出演:クララ・ルガアード、ヒラリー・スワンク

★★★

概要

アンドロイドに育てられた少女の話。

短評

アイリッシュマン』に備えて少し早めにNetflixに加入した。以前何度か利用したことがあるので、今回はお試し無料が使えず利用料金が発生するだろうと思ったら、一ヶ月は無料だった。基準はよく分からないがラッキーである。なるべくNetflixオリジナルの映画を消化していきたいと思う。

広げた風呂敷を畳みきれていない感じと中盤の中弛みがネトフリ作品らしい映画である。と言っても、本作は完成された映画のアメリカでの配信権をNetflixが購入したようなので、これをネトフリらしいと言うのは的外れかもしれない。もっともこういうケース自体はよくあるので、Netflixオリジナルと一口に言っても様々である。

あらすじ

何らかの原因により人類が死滅した世界。人類再繁殖施設が起動され、一人の少女が、一体のドロイドにより育てられる。娘はドーター(クララ・ルガアード)、ドロイドはマザー(ローズ・バーン)である。ある日、人類は生きられないと教えられてきた外の世界から一人の女性(ヒラリー・スワンク)が施設にやって来る。

感想

三十郎氏は終盤になるまで大きな勘違いをしていた。きっと機械が人類を滅ぼした『ターミネーター』的世界の話なのだろうと。それだと「どうしてドロイドは人類の再生を目指しているのか」という疑問が終始つきまとうことになるが、これは無用な疑問であった。人類死滅後の世界でドロイドは自律して動いているが、プログラム自体は人間により作られたものなのである。

(真偽はともかく)狼に育てられた子供が自分を狼だと認識するという話があるが、ドロイドに育てられたドーターは自分を人間だと認識している。「もっと機械側に都合のよい教育を施せばよいのに」と思いながら観ていたのだが、ドロイドの目的がちゃんと人類再生にあることを知って納得である。

しかし、この事実が分かると後味は大変に悪い。実はドーターは一人目の少女ではなく、何人かの失敗を経た上で育てられている。失敗した少女がどうなるかと言えば、焼却処分である。これを人間がプログラムしているというのは、少々怖い。倫理教育として功利主義を重点的に教えていることからも、少数者の犠牲を問わない思想の持ち主が人類再生を担っていることが察せられる(人類の死滅自体も)。仮に人類が再び繁栄の日を迎えるとすれば、それはそのような思想に基づく試験に合格したものが作り上げる社会なのである。

ノアの方舟的なモチーフも登場するので、ユダヤ教選民思想ってそういうことなのかなと考えさせられる。だとすれば、行動が伴わないだけでヒトラーと大差ないな。

展開はスリリング。ドロイドはドロイドという時点で信頼ならないし、外から来た女も同じ人間なのに信頼ならない。どちらも信頼ならないので、「これは本当?これは嘘?」と頭を混乱させて楽しめる。

施設内部のセットはよく見かける感じでありながらも冷たい感じが良かったが、施設の外に出た時には創造性の限界を感じた。デザイン・CGともに安っぽくて、そこまで頑張って作り上げた雰囲気が毀損されている気がする。ドロイドのデザインは、頭部がデスクトップ・コンピューターのケースみたいで面白かった。

劇中で使用されている人工子宮の技術は、是非実現されればよいと思う。人類は繁殖の苦行から解放されて、一歩先へ進めばよい。

NetflixのリンクはAmazonの商品リンクと違ってアイキャッチ画像が作れないので困っている。