オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『5時から7時の恋人カンケイ』

5 to 7, 96min

監督:ヴィクター・レヴィン 出演:アントン・イェルチンベレニス・マーロウ

★★★

概要

小説家志望の男が子持ちの人妻と不倫する話。

短評

学生時代、失恋した友人から「失恋ものの切ない映画が観たいが何かないか?」と問われた時、恋愛映画をほとんど観ない三十郎氏は返答に窮した。本作は、失恋という辛い出来事を、忘れられない大切な思い出としてポジティブに昇華している。ないとは思うが、次に同じ質問を受けた時には本作を勧めようと思う。そんな映画である。

あらすじ

オープンな不倫ものである。恋人も友達も作らず読んでは書く生活を送っていた小説家志望のブライアン(アントン・イェルチン)が、ある日街で見かけた女性アリエル(ベレニス・マーロウ)に一目惚れし、なんとかお近づきになろうとしたところ、彼女から子持ちの既婚者であることを打ち明けられた上で、“5時から7時の関係”を提案される。しかし、不倫だと分かってはいても本気になるわけで……。

感想

フランス語で“5時から7時の関係”は、不倫関係を意味するそうである。それも家族公認である。アリエルの夫にも愛人(オリヴィア・サールビー)がいるし、時にはディナーに招かれて子供や友人たちにも紹介される。なんてオープンな!『エマニエル夫人』の世界を地で行くなんてフランス人は凄いな(流石に場所を弁えずに交わったりはしないが)!

ブライアンが、オープンな不倫という文化や、ユダヤ人とフランス人の文化の違いに戸惑いながら、アリエルとの愛を深めていくところはコミカルに描かれている。ブライアンは目隠しをされると赤ワインと白ワインの区別がつかず、逆にアリエルはビールの違いが分からない。アリエルの家族に紹介された時は大いに戸惑っていたブライアンが、逆にアリエルを自分の両親に紹介して、両親が腰を抜かす。椅子が硬いからと座らないグレン・クローズも可笑しかったが、話を聞いて思わず座る姿はもっと可笑しい。更に、驚愕していたはずが、食事を共にした間に仲良くなり二人の関係を認めているので、もう一度笑える。

ありがちな話ではあるが、不倫は本気になる。しかし、本気になっても決して報われることはない。それを悲しい話として描くのではなく、美しい思い出として描いたのが本作の良さだろう。人はいずれダメになると分かっていれば最初からしない方がマシと考えがちだが、終わってしまった関係もまた自分の中で生き続ける。ダメになってしまったからといって無意味なわけではない。

前半のコミカルさから一転して、ブライアンが本気になる後半は雰囲気が重くなる。この対比はもっともなものだとしても、終盤のBGMはいささか大げさ過ぎた。