オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『バタフライルーム』

The Butterfly Room, 87min

監督:ジョナサン・ザラントネロ 出演:バーバラ・スティール、ジュリア・パットナム

★★★

概要

サイコ老婆vs性悪少女。

短評

鈴木その子もかくやの厚化粧ババアが魔女の如き猟奇行動に走る映画である。一応ホラー映画のはずなのだが、主人公アンの狂気がいかにも過ぎて逆に笑える。演出的な恐怖はほぼ全て彼女に頼り切りだが、全てを自分の理想通りに留めたい愛の暴走という物語的恐怖は気味が悪い。

あらすじ

蝶の標本収集を生き甲斐にする寂しい老婆アンが(バーバラ・スティール)、モールで出会ったババ活少女アリス(ジュリア・パットナム)にいいように弄ばれる過去の話と、お隣の母子家庭の娘ジュリー(エラリー・スプレイベリー)と交流する現在の話が行き来する。

感想

アンもアリスも裏の顔がまるで隠れていない。アンはどう見ても魔女だし、アリスはどう見ても性悪である。魔女と性悪の戦いは性悪に軍配が上がる。アンは自分の理想を他人に押し付けることが原因で孤独な老婆と化しており、その内面の醜さが外見に滲み出している。性悪は魔女の心の隙間に付け込むので、魔女は性悪の要求を断ることができない。キャバクラにハマるおっさんを見ているようである。アリスには自分以外の相手もいて、目的も分かっているはずなのに、「自分と彼女の関係だけは特別」と思い込む辺りにも既視感がある。アリスはいかにも狡猾そうな顔をしているのに、隙さえあれば簡単に騙されるのものなのだなあ。

しかし、魔女だって負けてはいない。キャバ嬢がおっさんから「搾り取るだけ搾り取ってサヨウナラ」すればおっさんがストーカー化するように、アンは狡猾な少女の想定を超えた執念を見せる。アンは娘に絶縁された独居老人で、言わば失うもののない無敵の人である。敵に回すと怖い。切り捨て方が難しいが、性悪が付け込みやすいのは彼女のように心に大きな穴の空いた相手なのだろう。世の中の“チョロい”おっさんたちから毟り取っている人たちも、気をつけなければ反撃に遭うかもしれませんよ。

主演のバーバラ・スティールは、かつてホラー映画のスクリーム・クイーンとして名を馳せたそうである。叫んでいた乙女が、乙女を叫ばせる怪物になって帰ってきた。その往年のホラー映画ファン的な楽しみまでは分からないが、彼女の怪演は迫力たっぷり。なお、彼女の娘を演じるヘザー・ランゲンカンプも『エルム街の悪夢』でナンシーを演じたスクリーム・クイーンである。という事情から、二つの理由でラストシーンは……ということになる。他にもスクリーム・クイーンたちが出演しているので、監督としてはこのキャストを集められた時点で感無量だったことだろう。

アンたちのキャラが立ち過ぎているために展開がバレバレだったので、そこにはもう少し工夫がほしかった。時系列の頻繁な入れ替えがその工夫だったのかもしれないが、もうひと工夫ほしい。