オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『イレブン・ミニッツ』

11 Minut(11 Minutes), 82min

監督:イエジー・スコリモフスキ 出演:パウリナ・ハプコ、リチャード・ドーマー

★★★

概要

17時から17時11分までの11分間。

短評

場面も飛ぶし時間も飛ぶしで何をやっているのかさっぱり分かりづらくても、最後には一箇所に集まるポーランドの群像劇。個別のエピソードが特別に魅力的でもなければ、エピソード間の絡み合いは無いに等しいほど薄い。結局何がしたかったのかを考えると、何が起きているのかを観客に悟られないように混乱させるのが目的だったように思われる。もっともラスト以外はほとんど何も起きていないのだが、それでもなんとなく面白い。

あらすじ

三十郎氏の理解力や文章力では本作のストーリーをまとめるのは無理である。そもそも物語的な意味がある話なのかもよく分からない。尻軽(easy fuck)で有名な女優アニャ(パウリナ・ハプコ)に、ホテルの一室で枕営業を要求する助平映画監督のリチャード。アニャの夫は妻の不貞を疑ってホテルに乗り込もうとし…くらいまでなら分かりやすいが、夫がホテルへの道中ですれ違ったホットドッグ屋、からホットドッグを買う犬を連れた女やシスターたち、ホットドッグ屋の息子はジャンキーでバイク便の配達人、ホテルの一室でポルノを見る男女、強盗を企てる少年、産気づいた妊婦の救出に向かう救急車と次から次に重要なのかどうなのか分からない人物が登場する。これらの物語が一点に収斂していくわけでもなく、ただ場所と時間が一箇所に集まるのである。

感想

アニャがリチャードに身体を許すのか否か(という桃色な期待)、夫は突入するのかといった要素で興味を引いておきながら、今か!という時に場面が飛ぶ。飛ぶのは場面だけでなく時間も飛ぶので、大変に混乱する(なお、三十郎氏は混乱が好物である)。時系列を教えてくれるのは、各エピソードに共通して登場する低空飛行の飛行機や繰り返し要素である。とにかくどこに転がっていくのか分からないが、全体的に不穏な空気が漂っていることだけはBGMが教えてくれる。この不気味風な音楽と演出、そして強引なラストがなければ単なる日常風景である。

繰り返しになるが、何がしたかったのかも何をしていたのかも分からない。各エピソードが連なり合って一つの物語になっていないのに、唐突とも言えるあのラストが訪れるのは不条理劇だと解してよいのだろうか。そこに必然性は全く感じられない。必然性がないからこそ不条理なのか。しかし、それだと不条理感が物足りない気もする。三十郎氏としては「意味ありげだけど意味のないバラバラの話を無理やりまとめてみただけ」という身も蓋もない見解を推したい。

登場人物の何人かが目撃したという黒い点の正体は何だったのだろう。結末から逆算すると死の予兆や不吉な存在のようにも思えるが、何しろ話に出てくるだけで物語と一切絡まないので、そこにも強引さを感じる。

映画を観終わってから冒頭の大変見辛い映像群(自撮りやスカイプ、監視カメラの映像で登場人物を紹介している)を見直してみたのだが、映画全体を把握しても違った意味が見えてくることはなかった。やはりこの話に意味なんてなかったとしとしか思えないが、本当に何の意味もないのなら、意味ありげに見せることだけで興味を保たせる技術は大したものだと思う。

監督はイエジー・スコリモフスキ。『アベンジャーズ』にGeorgi Luchkov(読み方はジョージ・ルチコフでよいのか?)として出演しているが、分かる人はいるだろうか。ブラック・ウィドウに尋問しているロシア人である。三十郎氏は画像を見ても「こんなおっさんいたか?」というレベルだった。どういった縁で出演したのだろう。

イレブン・ミニッツ(字幕版)