Raw Deal, 105min
監督:ジョン・アーヴィン 出演:アーノルド・シュワルツェネッガー、ロバート・デヴィ
★★★
概要
シュワちゃんがマフィアに潜入捜査する話。
短評
シュワちゃんの潜入捜査官役のあまりの似合わなさに微笑んでいたら、終盤にそれまでの話が全て無かったかのように本来の姿を取り戻して、「やっぱりシュワちゃんはこうでなきゃ!」となる頭空っぽなアクション映画である。それにしても『ゴリラ』という邦題は酷くないか。これではまるで潜入捜査が様になっていないシュワちゃんの猿芝居をバカにしているようではないか。同じ年に公開されたスタローンの『コブラ』に対抗したのだろうか。
あらすじ
仕事で無茶をしてFBIから田舎警官に左遷されたシュワちゃん(シュワちゃんのような俳優は役柄に関わらずシュワちゃんとしてしか認識できない)。かつての上司ハリーがマフィアに息子を殺され、「復讐してくれたらFBIに戻してやる」と言うので、シュワちゃんは潜入捜査を開始する。
感想
「捜査開始だぜ」とガソリン工場を爆破して自分を死んだことにするシュワちゃん。トレーラーで賭場に突っ込むシュワちゃん。捜査とは名ばかりの暴虐の限りを尽くして名を売ると、彼は見事マフィアに潜り込むことに成功する。マフィアに潜入するシュワちゃんは、スーツでめかしこみ、髪をオールバックに撫で付け、ジェームズ・ボンドよろしくスマートに振る舞おうとする。これが驚くほどに似合わない。全然スマートじゃない。英語の発音が怪しすぎて間の抜けた感じになり、マフィアに溶け込んでいるはずなのに違和感が半端じゃない。彼に騙されるマフィアの頭がゴリラである。
演技が下手というメタ要素で三十郎氏を楽しませてくれたシュワちゃんだが、ハリーが撃たれたことを切っ掛けに「奴ら全員ぶっ殺す」と本来の姿を取り戻す。窮屈そうなスーツを脱ぎ捨てて革ジャンに着替え、装備を整える姿は、やっと正気に返ったかのようである。シュワちゃん、あなたはあらゆる意味で目立ち過ぎるから潜入には向かない。そこから先はシュワちゃん無双である。とにかく銃をぶっ放して殺しまくる。虐殺である。「最初からそうすればよかったのでは……?」などという無粋な疑問は禁句である。シュワちゃんがリハビリ中のハリーに言っているではないか「とりあえずやろうとすることが大事なんだ」。
「とりあえずシュワちゃんが暴れられる舞台を整えたので後は好きにやってください」という清々しまでの雑さが感じられる阿呆映画だった。キッチンドリンカーの妻がいつの間にか妊娠しているし、ヒロイン的な女とのロマンスらしきものは尺稼ぎとしか思えないが、なんか色々とどうでもよくなる。気にする方が阿呆な気がしてくる。シュワちゃんが出ていなかったら、間違いなくつまらないを超えてつまらないだろう。