オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ボストン・ストロング ~ダメな僕だから英雄になれた~』

Stronger, 118min

監督:デヴィッド・ゴードン・グリーン 出演:ジェイク・ジレンホール、タチアナ・マスラニ

★★★

概要

ボストンマラソン爆弾テロ事件で両脚を失った男が歩き出す話。

短評

ボストンマラソン爆弾テロ事件の“その後”の映画化である。事件そのものと犯人逮捕を描いた『パトリオット・デイ』も今月下旬にプライム会員特典になるので、併せてどうぞ。

あらすじ

主人公はジェフ・ボーマン(ジェイク・ジレンホール)。コストコで働く熱狂的レッドソックスファンである。これまでに三度もフラれたにも関わらず、元恋人のエリン(タチアナ・マスラニー)の気を引くため、彼女が走るボストンマラソンのゴール地点で応援していると、爆破テロに巻き込まれて両脚を失う。目を覚ましたジェフは、事件発生前に目撃した爆破犯の情報を提供したことで、一躍ヒーローになる。

感想

ジェフはダメ男である。どうしてエリンに三度もフラれたのかと言えば、部屋から出たがらない彼がいつも遅刻してばかりで我慢ならないからである。両足を失ってからも、リハビリはサボるし、酒に溺れるし、妊娠を告げるエリンに「僕に子育ては無理だ!」と言い放つし、まるで格好いいところがない。事件後に「僕には君が必要なんだ」とエリンを口説いて成功しても、すぐにダメ男ぶりを明らかにしてまたフラれる。彼の一体どこがヒーローだと言うのか。

それは恐らく彼がとっても普通の人だからである(普通以上にダメなところはあるが)。昏睡から目覚めた直後に証言するのも、両脚の喪失から立ち直るのも、リハビリして再び歩けるようになるのも、その状況に置かれれば当然やるべきことのように思えるが、きっと実際に行動するのは想像以上にキツい。しかし、世の中にはより状況に置かれている人もいて、挫けかけたジェフは、事件時に自分を救ったカルロスの話を聞いてそのことに気付く。偶然から英雄視されてしまった自分と現実の自分とのギャップに苦しむジェフだったが、彼が“諦めない姿”を見せることで、より大きな悲しみや苦しみを抱える人々の希望となるのである。ヒーローとは、象徴である。

英雄視されることに押し潰されそうなほど弱かった男が、誰かの英雄となることを受け入れることで強くなる。その姿は間違いなく格好いい。

ジェフの親戚一同が強烈なキャラクターである。オプラ・ウィンフリーを崇拝する母パティを筆頭に、一族全員で病院に押しかけ待合室で騒いでいる。ジェフの上を行くダメ集団である。映画を通じて彼らには変化がなかったように思うが、「こんな奴らでも家族だから仕方ない」ということなのだろうか。それにしても「私の息子とセックスしたの?」というのは、あまりに直截な質問である。

ジェフがエリンの友人にローストチキン男と呼ばれていたり、ジェフの目覚めてから二言目が「ダン中尉?」だったりとコミカルな描写も多く、あまり重苦しい感じはしなかった。ドライブ中に停車させられたジェフが、警察に「写真撮ってもいいか」と聞かれるのも笑える。

始球式に登場するペドロ・マルティネスは本人。少し丸くなったかな。