オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『CHAOS カオス』

Schneeflöckchen(Snowflake), 121min

監督:アドルフォ・J・コルメレル 出演:クセーニャ・アセンツァ、エルカン・アチャル

★★★

概要

家族を殺した犯人に復讐する話。

短評

時間軸を切り刻んだ上に、何故か登場人物の行動を予言する脚本が登場して、非常にややこしいことになっているドイツ映画である。特に前半は「は?どういうこと?」の連続で、話について行くのに苦労する。これは大変に素敵な混乱である。時間軸についての混乱が収まったかと思えば、脚本の謎は残ったまま。こちらについては最後まで意味が分からなくて不満なのだが、復讐の連鎖というメインストーリーはそれなりに面白かった。

あらすじ

ケバブ屋で味についての揉めた結果、店主を殺したトルコ系のタンとジャビド。そこに居合わせた客も皆殺しにする(この事実が判明するのは話が進んでから。味についての口論を見せた後、床にズラッと死体が転がっているシーンに移行するのは上手い興味の引き方である)。彼らが店を出て、車を盗んで逃げ出すと、車内には先程の彼らの会話が記された脚本が。「これはどういうことだ!」と脚本を書いた歯科医のアレンドを訪ねる。一方、トイレにいたために難を逃れたエリアナXenia Assenza)は、お供のカーソンと共に殺し屋を雇って両親を殺した犯人への復讐を画策する。

感想

以上の話が繋がるまでが非常に混乱していて面白い。繋がっても「なるほどね~」的な気持ち良さはないのだが、ただ混乱しているだけで楽しいのである。混乱に拍車をかけるのが愉快な登場人物たちで、カーソンの父は自称神だし、神が紹介する殺し屋たちが、豚と鶏の人肉食兄弟だったりビジネスライクだったりと個性豊か。特に後者の殺し屋が気に入った。彼らは「はい、じゃあここにサインして。オプションはどうする?キメ台詞は?同伴希望?三枚目の紙に標的の情報を記入してね」といった具合にきめ細やかなサービスを提供している。殺し屋稼業も顧客満足が大切なのだな。

復讐の対象であるタンとジャビドが実は家族を殺されており、別の相手への復讐を目論んでいるという復讐の連鎖は面白かったのだが、それを完結させる脚本家と神の存在は意味不明だった。アレンドたちは「素晴らしい脚本が書けた」と感動していたが、三十郎氏にはどうにも展開が唐突過ぎる。タンとジャビドが脚本家の存在を認識していないのなら謎は残したままでも良いが、認識している以上はそこにもけりをつけないと物語が完結しない。自称神が本当に神で、復讐の連鎖を完結させるために脚本を利用したということでよいのか?

原題のスノーフレークは、天使を羽をつけた歌手(Judith Hoersch)の芸名である。彼女の白い羽根が鮮血に染まるのが綺麗だった。彼女の恋人ハイパーエレクトロ・マンは結局何者だったのだろう。

移民排斥のようなモチーフも盛り込まれているが、その辺りは上手く消化できていない印象。

2000年に『カオス』というタイトルの中田秀夫監督の邦画が公開されており、2006年にはこれまた『カオス』という邦題のジェイソン・ステイサム出演作が公開されている。しかも後者には、本作と同じ『CHAOS カオス』表記や『カオス<CHAOS>』という表記も見られる。本作は大人しく『スノーフレーク』にしておけばよかったのではないだろうか……と思ったら、それはそれで同タイトルの邦画が2011年に公開されている。担当者の苦労が偲ばれる。

CHAOS カオス(字幕版)

CHAOS カオス(字幕版)