オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ウルフ・オブ・ウォールストリート』

The Wolf of Wall Street, 179min

監督:マーティン・スコセッシ 出演:レオナルド・ディカプリオジョナ・ヒルマーゴット・ロビー

★★★★★

概要

仲買人デビューの日にブラックマンデーに見舞われた証券屋が成功を収める話。

短評

娘のために品行方正な映画を撮って欲求不満だったのだろうか。スコセッシが70代にしてあらゆる意味で現役バリバリなところを見せつけてくれた。3時間の半分ほどをセックスとドラッグに費やして、マネーという現代の地球を支配する最大の宗教を描いてみせた快作である。スコセッシがデ・ニーロとのコンビを解消し、ディカプリオと組んでからはベストの一作だと思っている。

あらすじ

LFロスチャイルドに入社し、華々しいウォール街デビューを飾るはずだったジョーダン・ベルフォート(レオナルド・ディカプリオ)が、仲買人デビューの日に会社が倒産するという悲劇に屈することなく大金持ちになるサクセス・ストーリーである。話の構造が『グッドフェローズ』に似ており、いわゆる悪党の人生を魅力的に描くことで、既存の倫理観を滅茶苦茶に破壊している。最終的にジョーダンは逮捕されるが、それは正義の勝利ではなく、彼が未だに金持ちであることに変わりはない。本作は清貧や真面目といった“正しい生き方”のバカバカしさを嘲笑ってみせることで、倫理観が曇らせている真実を暴いている。

感想

スコセッシお得意のスローモーションやストップモーションが、ドラッグによる陶酔感と抜群に相性が良い。ジョーダンがドニー(ジョナ・ヒル)に勧められて初めてのクラックをキメて以降は、全編がラリっている。観ているだけのこちらまでラリったような気分になり、常軌を逸した狂乱生活を笑っていると映画が終わっている。全社員と寝た驚異の尻軽女パム(カーラ・コルボ)と結婚した従業員ベンの自殺という悲惨なエピソードすらギャグに過ぎない。全てが愉快、全てが豪快で、三十郎氏からすると現実感がなくて、一種のファンタジーを見ているようですらある。究極のパーティー映画と言ってもよい。

本作でディカプリオがオスカーを獲得できなかったのは残念だった。映画スターに特有の、抜群の魅力と胡散臭さの同居が見事に役にハマっている(『マグノリア』のトム・クルーズにも似たような妖しさがある)。特に“レモン”を決めてラリった演技は凄まじく、本作の翌年にホーキング博士役でオスカーを掻っ攫ったエディ・レッドメインの一足先を行っていたと言えるだろう。従業員を煽るスピーチにも乗せられそうになる。他の出演者も魅力的で、いくらハーレイ・クインがハマり役であろうとも、三十郎氏にとってのマーゴット・ロビーベイブリッジの公爵夫人である。彼女がいくら魅力的だからと言って11秒は早過ぎませんか、ベルフォートさん?しかし、三十郎氏もマーゴット・ロビーが相手であればカルロス2世のように……いや、この話はやめておこう。

タイトルの『The Wolf of Wall Street』は、ジョーダンにインタビューしたフォーブスがつけた蔑称である。同名の映画が1929年に公開されているようだが、何か関係があるのだろうか。彼をこき下ろす記事に憤慨するジョーダンだったが、妻テレサクリスティン・ミリオティ。ナオミのゴージャスさの影に埋没してしまったが、彼女も美人だと思う)の言う通り悪い宣伝というものはない。スコセッシ翁の物議を醸した「マーベル作品は映画じゃない」という発言も、メディアが過剰に対立煽りをしてくれたおかげで新作のよい宣伝になっただろう。あとは『アイリッシュマン』が、「これが映画だ」と観客を納得させてくれれば完璧である。そして、そうなるものと三十郎氏は信じている。

完全にイカれているし信用できないとは思うが、マーク・ハンナ(マシュー・マコノヒー)は良い上司だと思う。新人をクソみたいな先輩から守りつつ、業界に対して抱いている幻想を愉快に打ち砕いて、仕事の真実と魅力を理解させる(逆に、彼の語る真実を顧客は頭に入れておくべきだと思う)。彼のゲームにはついて行けないが、カモではなく身内でいる内は(破綻した倫理観の上では)良い人だろう。彼が胸を打ち鳴らしながら歌う『The Money Chant』が耳から離れない。「したいからじゃなくて必要だからする」というアレが一日二回なのは凄い。三十郎氏も……いや、この話はやめておこう。なお、モデルになった本人は詐欺と資金洗浄で逮捕されている。

ドキュメンタリー映画『FUCK』を除いて「Fuck」という言葉が最も多く使用された映画として名を馳せたが(569回)、本作の翌年に公開されたカナダ映画『スウェアネット:ザ・ムービー』に更新されたそうである(驚異の935回)。同作はNetflixで観られるようなので、『アイリッシュマン』のために契約したら観てみようと思う。本作にはおっぱいも沢山出てくるが、市場最も多くのおっぱいが登場した映画は何なのだろうか。

ウルフ・オブ・ウォールストリート 上 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

ウルフ・オブ・ウォールストリート 上 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)