オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ミラージュ』

Mirageman, 87min

監督:エルネスト・ディアス・エスピノーザ 出演:マルコ・サロール、マリア・エレナ・スウェット

★★★

概要

どこからともなく現れ跡を残さず消える幻のヒーロー、その名もミラージュマン。

短評

チリ発、CG無用の肉体派ヒーロー映画である。映像はショボいが動きはキレがある。ストーリーはツッコミどころ満載、ヒーローの衣装も格好悪い、映像は自主制作レベル。それでも面白い。「こんなヒーロー映画を観たかった!」とまでは言わないが、間抜けだけど格好いい牧歌的なヒーロー像が楽しい映画である。

あらすじ

ヌードモデルのポスターを貼った薄暗い部屋で、日夜血の滲むようなトレーニングに勤しむクラブの用心棒マコ(マルコ・サロール)。彼は偶然に発見した強盗を華麗に撃退し、更に被害者がテレビのリポーター、カロル(マリア・エレナ・スウェット)であったことから大きな注目を浴び、「自分の使命はこれだ!」と自警活動を開始するのであった。ミラージュマンの誕生である。

感想

厳しい鍛錬を積んでいるミラージュマンは確かに強いが、ヒーローとしてはド素人である。市販の覆面とコスチュームを入手するも、現場で着替えに掛かる時間が長過ぎて、敵に逃げられてしまわないのか心配になる。幸い敵は悠長に待ってくれているが、戦いに勝利して着替えに戻ると服を盗まれているという体たらく。ニュースキャスターに「敵に笑われないスーツを着てくださいね」と嘲笑されるミラージュマンだったが、三十郎氏は間抜けな小市民的ヒーローの姿も好きだった。偽依頼に何度も騙され、色仕掛けに引っ掛かる可愛いミラージュマンである。

何と言っても最大の見所はミラージュマンの身体を張ったアクションである。蹴りを上手く織り交ぜた戦い方が武道家らしくて素敵だが、やたらと派手な動きが多く、やたらと決めポーズが多い。この辺りが素人っぽいと言うか、武道オタクっぽい感じがして絶妙にダサ格好いいのである。パートカラーを使ったオシャレ演出でさえ絶妙にダサく、偽ロビンと敵地に乗り込む演出は昭和の特撮感がある。たまにはスタイリッシュじゃないヒーローがいてもよいのである。

そんな小市民的ヒーローのミラージュマンだが、その出自は重い。幼い頃に両親を通り魔に殺され、弟は未だに事件から立ち直れず入院している。精神を病んだ弟が興味を持ち、明るさを取り戻してくれたのが、テレビで(そうとは知らずに)見た兄の姿なのである。なんとも泣かせる話ではないか(泣かないけれど)。コスチュームを批判されて自分でデザインに挑戦するも上手くいかないマコが、ミラージュマン・スーツのヒントを得たのも弟の描いたイラストである。ミラージュマンは決して一人じゃないのだ。

どうして邦題を『ミラージュマン』にしなかったのか疑問に思ったが、ミラージュマンという名称が既に『キン肉マン』に登場しているのが理由のようである。ミラージュはミラージュで三菱の自動車があるので、どうやっても検索には引っ掛かりにくいヒーロー映画である。