オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『シャッター アイランド』

Shutter Island, 138min

監督:マーティン・スコセッシ 出演:レオナルド・ディカプリオマーク・ラファロ

★★★★

概要

連邦保安官が孤島にある精神病院で行方不明になった女性を探しに行く話。

短評

一度目は、あっと驚かされて抜群に面白い。二度目は、違った視点から観られてこれまた非情に面白い。三度目になると、二度目までよりは少々落ちるがやはりこれまた面白い。三十郎氏は阿呆なので時間が経つと大抵のことは忘れてしまう。前回までに気付いていたであろうことを、今回初めて気付いたかのように喜ぶ。今回が何度目なのかすら忘れてしまったが、結局何度観ても面白いのである。

感想

スコセッシ映画としては自身の持つ作家性を抑えた仕上がりだと思うのだが、その分職人芸と呼ぶべき演出力を存分に発揮しているし(『ハスラー2』にも似た印象を持っている)、よく考えればスコセッシらしいと思わせられるモチーフも多い。オチが分かっているミステリーで、更にそれを踏まえた演出も既に知っているはずなのに、それでも面白いのは、スコセッシによる超一流の雰囲気作りと贖罪の物語というドラマの賜物だろう。

ラストシーンにはもっと解釈の余地が残されているように記憶していたのだが、今回はテディ(レオナルド・ディカプリオ)が事情を理解した上で楽になりたいという選択をしたようにしか見えなかった。結末から逆算するような見方をしたのが原因だろうか。「なんでこんなに分かりやすいヒントに気付かなかったんだ!」と思うような描写が多い。

テディの主張が妄想でコーリー(ベン・キングズレー)たちがの主張が正しいという見方と、その逆でテディがコーリーたちにハメられたという見方の分岐点は、洞窟にいた医師のレイチェル(パトリシア・クラークソン)だろう。彼女を現実の存在と見做すか、テディの妄想と見做すかによって最後の解釈が分かれることになる。最近『キング・オブ・コメディ』のような映画を観ている三十郎氏としては、あれが妄想であると自然に受け入れてしまった。しかし、よく考えてみるとそもそもあそこでチャック(マーク・ラファロ)が監視の目を解いた理由が何なのかという疑問も残る。やっぱりよく分からないが、作品のテーマ性を考えれば、テディの妄想であったと考える方が収まりが良い。

抑えた中にもスコセッシらしさを発揮したのは、映画を貫く人間が秘めた暴力性についての描写だろうか。警備隊長が口にする「God loves violence.」に続く言葉はいかにもスコセッシらしい。これは原作にもある台詞なのだろうか。ダッハウ強制収容所で捕虜を射殺するスローモーションのシーンも、いかにもスコセッシ的な暴力的演出である(現実的に考えれば横から順番に射撃するのはおかしい。きっかけが発生した時点で一斉射撃になるか少なくともランダムになるはずである。このシーンもテディが過去を改竄している可能性がある)。加えて、妄想と現実が交錯するモチーフもスコセッシ的だろう。どんでん返し系のミステリーなんてスコセッシらしくない純エンタメだと思っていたが、考えてみればしっかりと自分の印を刻み込んでいる。特に妄想の持つ重要性はこれまで軽視していたように思う。気付かせてくれてありがとう、『ジョーカー』。

重苦しい雰囲気の中で小気味いい編集が印象的だった。担当しているのはセルマ・スクーンメーカーで、なんと『ドアをノックするのは誰?』以来の常連編集者である。当然『アイリッシュマン』にも参加しており、彼女が三時間半をどのようにして長く感じさせないのかも要注目である。

とても細かく解説や考察を加えているサイトがあったのでリンクを貼っておく。読んでいると、また観たくなってきた。

シャッター・アイランド (ハヤカワ・ミステリ文庫)

シャッター・アイランド (ハヤカワ・ミステリ文庫)