オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『死刑台のエレベーター』

Ascenseur pour l'échafaud(Elevator to the Gallows/Lift to the Scaffold), 91min

監督:ルイ・マル 出演:ジャンヌ・モローモーリス・ロネ

★★★

概要

不倫カップルが女の夫を殺して一緒になろうとしたら計画通りにいかない話。

短評

よく考えてみれば割と間抜けなことをしているはずなのに、全編がとってもオシャレで格好いい映画である。照明技術が上手くてモノクロの映像が格好いいし(取調室の暗闇が秀逸)、そもそもフランス語の響きがオシャレである。おまけにサントラを担当しているのは『Birth of the Cool』のマイルス・デイヴィスと来た。これはクール以外になりようがない。監督はルイ・マル。ほぼ彼のデビュー作と言ってよいが、結局本作が最も有名な作品に終わったのではないか。

あらすじ

一組の不倫カップルが、女フロランス(ジャンヌ・モロー)の夫殺しを画策している。男ジュリアン(モーリス・ロネ)は、女の夫が社長を務める会社の従業員である。男は首尾よく社長を自殺に見せかけて殺害し計画は完遂されたかに思われたが、現場に忘れものをして取りに戻ったことから歯車が狂い、状況が二転三転していく。

感想

抜群に格好いい空気に飲まれてしまうが、やっていることはほとんどドタバタ喜劇である。現場に残した証拠を取りに戻ったらエレベーターに閉じ込められて何も出来ず、ようやく出られたと思ったら何故か社長殺害とは別の殺人事件の容疑者になっている。これを喜劇と言わずして何と言うか。概略を見れば間違いなく喜劇なのだが、細部にはスリルが詰まっているし、最終的には、すれ違ってきた二つの物語が寸分の隙もなくガチッとハマっている。とにかく密度が凄い。

特に魅力的なのは、夜のパリを彷徨うフロランスである。彼女は(盗まれた)ジュリアンの車の助手席に女が乗っているのを目撃し、「彼は私を捨てたのか」「計画は失敗したのか」と不安に襲われる。エレベーターの中にいるジュリアンとは連絡が取れず、彼女にできることは何もないし、何も分からない。焦燥感だけが募る。彼女の不安や焦りが不十分なものであったなら、「いやいや、あんたの男は阿呆だからエレベーターに閉じ込められてますよ」で終わっている話である。

オシャレ映画の体裁を捨ててリメイクするなら、前半はエレベーター内のソリッド・シチュエーション・スリラー、後半は別の事件容疑者扱いされる巻き込まれ型スリラーのコメディにしても面白そうである。正面からコメディにしてしまうと「近くで見れば悲劇、遠くから見れば喜劇」の要素がなくなってしまうが、それはそれということで。リメイクとしてではなくネタだけ借りてきたようなコメディはないのだろうか。日本でもリメイクされたようだが、そちらは未見。

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