オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『マンホール』

Septic Man, 86min

監督:ジェシー・T・クック 出演:ジェイソン・デヴィッド・ブラウン、モリー・ダンズワース

概要

うんこ魔人vsシリアル・キラーvs妊婦。

短評

汚い映画である。と言っても、うんこがうんことしてうんこうんこしているのは冒頭のシーンくらいなので、お食事中の方でも安心して観られる映画……ではない。茶色いうんこが登場するのは最初だけだが、全編が汚水まみれである。汚水だけではなく血も流れるし、ストーリーもうんこを離れて明後日の方向に行ってしまうし、主人公が変化するだけで画面に変化はないしで退屈な映画である。

あらすじ

原因不明の水質汚染に襲われた町を配管工のジャックが救う話である。既知のものから未知のものまであらゆる感染症が蔓延し、住民には避難指示が出される。高額報酬と引き換えに町に残って原因を究明する仕事を依頼されたジャックが古い浄水設備に向かったところ、マンホールから落下して閉じ込められてしまう。

感想

ジャックが町を救うために四苦八苦することはない。浄水設備に死体が詰まっていただけである(これくらい行政が仕事しろ)。ジャックが脱出するために下水管の中を彷徨うのかと思ったらすぐに行き止まりになるので、映画のほとんどは落ちた場所で喚いているだけである。ソリッド・シチュエーション・スリラーならぬブリッと・シチュエーション・スリラーである(もっと上手いこと言いたいが思いつかなかった)。

画面は常に薄暗く汚いのだが、冒頭で女性が嘔吐下痢しているバスルームに比べればマシである。『トレインスポッティング』が“the worst toilet in Scotland”なら、こちらは“the worst bathroom in the world”だろう。上から下から大洪水である。ゲーゲーと吐くシーンはよく見かけるが、ビュルっと飛び出すシーンを見るのは稀である(見たくもないが)。この天井まで茶色いものが飛び散ったバスルームと比較すれば、下水管の中にあるものはあくまで汚水であって、全力のうんこ映画ではなかった。どうせならもっとうんこ映画として振り切ってほしかったというのが本音である。一応断っておくが三十郎氏にその種の性嗜好はない。

何故下水管にうんこではなく死体が詰まっているかと言えば、浄水設備に頭の弱い弟と頭のイッてる兄のシリアル・キラー兄弟が住んでいるからである。汚水にまみれて全身ブクブクのフジツボ状に進化したジャックが兄弟と対決する。そう、彼こそがダーティーヒーロー、セプティック・マン(原題参照。直訳は汚水男)なのだ!見事シリアルキラーを退治するセプティック・マン!やったね!……しかし、問題が解決してもセプティックマンは地上では生きられない。ネズミの血をエナジードリンク代わりに飲み、死体から回収した腸を武器に使い、汚水で行水するのがセプティック・マンなのだ。

ジャックの妻シェリー(モリー・ダンスワース)が救助に現れても時既に遅し。セプティック・マンは「ここが俺の家だ!」と下水管から出ようとしない。シェリーは泣く泣く設備を稼働させ、セプティック・マンを洗い流す。排水されて外に出たセプティック・マンはもはやダーティーヒーローではない。ヴィランになってしまった。なんとも悲しいセプティック・マン誕生の物語であった。

このセプティック・マンはどのユニバースに所属しているのだろうか。きっとアイアンマンのスーツなんて触るだけで腐食させられるし、バットマンみたいな生身のヒーローは近くで呼吸するだけで感染症に罹患するに違いない。カナダ人の糞尿が生んだ最強ヴィラン、セプティック・マンを倒せるヒーローはいるのだろうか。勝者が誰かに関わらず、汚い戦いになることは間違いない。