オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ハットンガーデン・ジョブ』

The Hatton Garden Job(One Last Heist), 92min

監督:トニー・ロンプソン 出演:マシュー・グッド、フィル・ダニエルズ

★★

概要

老人集団が金庫破りする話。

短評

2015年に起きた実在の事件の映画化である。本作の公開は2017年で事件の二年後と素早い映画化なのだが、驚くことに事件翌年の2016年には『Hatton Garden: The Heist』というタイトルで既に映画化されている。更に驚くことに2018年には『King of Thieves』というタイトルで三度目の映画化がなされている(こちらはマイケル・ケイン主演)。更に2019年には『Hatton Garden』というタイトルのテレビドラマまで。三十郎氏は本作を観るまで事件について知らなかったのだが、本国イギリスでは大人気の事件らしい。その割にはいずれの映画も評判が芳しくない。

感想

老人集団が貸し金庫からの強奪に挑むという構図は好奇心をくすぐるが、映画自体は粗製乱造のガイ・リッチー模倣作という印象を受けた。「編集とBGMでとりあえずオシャレにしとけばいいんでしょ?」みたいなノリである。それはそれで構わないのだが、金庫にドリルで穴を開けるために待機している時間があまりに長く、実話が基になっているとは言えど、盛り上げ方を間違えたように思う。しかも、ブライアンが倒れて一度撤退した後に戻ってきてやり直すなんて雑な展開が許されるのかと思うが、これは実話なので仕方ないのか。

老人集団による泥棒という設定が人気らしいが、老人らしさは活かされていなかった。ドラッグかと思いきや糖尿病のインシュリン注射だったり、作業中に体調を崩して倒れるといった悪い意味での老人らしさはあるものの、長年の経験と知恵を活かすような老獪な描写が見られなかったのは残念である。バーで騒ぐ若者たちをやり込める方法が“なぞなぞ”というのも笑いどころなのかよく分からない(上手い謎掛けではあった)。現金強奪の罪で収監されていたテリーが、逃亡生活という名の子供部屋生活を送る内に母親の小言に嫌気が差して自首したというエピソードが面白かったので、メンバーの個性やスキルにもっと焦点を当て、それらを活かすような計画に再構築すればよかったと思う。

マシュー・グッドは文句なしの男前なのだが、脱ぐと意外にだらしない身体をしていて親近感が湧いた。

日本の高齢者も、自動車の運転を誤るだけではなく、このように大きな事件を起こして世間をあっと驚かせてみてはいかがだろうか。貧困に喘ぐ老人が富める者から奪えば、きっと一部から熱烈な喝采を浴びるはずである。そのためには犯行声明を出すか逮捕されるかする必要があるのが難点だが、逮捕される前にバラ撒いてしまえば伝説になれる。