オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『(r)adius ラディウス』

Radius, 92min

監督:キャロライン・ラブレシュ、スティーヴ・レナード 出演:ディエゴ・クラテンホフ、シャーロット・サリヴァン

★★★

概要

俺に近づくと火傷じゃ済まないぜ。

短評

主人公に近付いた人間が、動物が、皆白目になってバタンと倒れるSFスリラーである。提示された謎とその部分的解明の導入部が素晴らしく、グイグイと引き込まれる。この不思議な能力の全容を知りたいという好奇心はあるが、落とし所としては“これ以外にない”と思える納得の形である。

あらすじ

「ここは何処?私は誰?」状態で事故から目覚めた主人公の男。運転免許からリアムという名前が判明する。彼が出会った人は皆目が白濁して死んでいる。テロ?ウイルス?一体何が起きているのか。

感想

リアムが自分の能力に気付く前、車に乗った女やダイナーの客と店員が皆死んでいるシーンは完全にホラーである。この段階では何が起きているのかリアムにも観客にも全く分からない。免許の情報を頼りに自宅に辿り着き、外にいる男に「外は危ないぞ!」と呼びかけたら、よく聞こえず近付いて来た男がバタンと倒れる。ここで「リアムに近付くと死ぬのでは?」と示唆され、本人もそれに気付く。カラスを使った実験で確定する瞬間はゾクゾクする。恐ろしい事態になっていると同時に、興味深い謎が提示されてワクワクが止まらない。この導入部の状況説明は秀逸である。

その後リアムはジェーン(シャーロット・サリヴァン)という女性と出会うが、彼女は何故か平気である。そうやって徐々にリアムの能力が明らかになっていく(犬やすれ違う車が平気という次のルールの示唆も上手い)。こうして解明されていくのは、リアムの能力の内、その能力が与える影響である。そもそもこの能力が一体何なのかという謎は残る。当然、このもう一つの謎が気になるわけだが、これは明らかにされてはならないタイプの謎である。謎は謎のままに語らねばならない。本作がこの謎を解明するミステリーであれば、どんな説明をつけようとも納得いかない陳腐な結末になっていたに違いない。あの雷の正体は、潜在的欲求の発露でも贖罪への導きでも好きに解釈すればよい。

この不思議な能力にばかり気を取られている内にすっかり忘れてしまっていたことがある。最初の謎である。「ここは何処?私は誰?」の自分の名前は分かったが、名前だけで自分が誰なのか分かったと言えるだろうか。これは上手いミスリードだったと言える。謎のままにしておかねばならない謎には決着がつけられない。しかし、物語には決着をつけなければならない。意図せずとも人を殺してしまう能力をそのままにしておくわけにはいかない。そうすると、やるべきことは決まっている。良くも悪くも“これしかない”という結末に至る自然な流れが(やや強引に)生まれていた。

英語のradiusは半径の意味で、数学の問題に登場する半径rのrであ~る(ごめんなさい。親父ギャグを我慢できない年代に差し掛かっているのです)。直径は大文字のRが使われていたように思うのだが、英語で直径はdiameter。どうして大文字のRなのだろうか。

(r)adius ラディウス(字幕版)

(r)adius ラディウス(字幕版)