オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『デス・マングローヴ ゾンビ沼』

Mangue Negro(Mud Zombies), 104min

監督:ロドリゴ・アラガォン 出演:ワルデラマ・ドス・サントス、キカ・オリヴェイラ

★★

概要

ブラジルの奥地でゾンビが発生する話。

短評

ロドリゴ・アラガォン監督の記念すべきデビュー作。三十郎氏は『シーオブ・ザ・デッド』、『吸血怪獣 チュパカブラ』、そして本作の順で観たので、製作された順番を遡っていったことになる。やる気の感じられないレベルのストーリーと衝撃的なレベルのグロテスクは本作から一貫して変わることはない。ブラジルの奥地という舞台や、ほとんど投げっぱなしのエンディング、そして尋常ではない中弛みとテンポの悪さというアラガォン印の奇天烈映画である。

感想

どう考えても家庭用ビデオカメラで撮影したであろう低画質である。他作品も低画質だったが本作は特に酷い。流石に見づらい。日中に撮影した映像を無理やり夜のシーンにして色がおかしなことになっているも笑える。画質自体は作品数を重ねる毎に微妙に(そして悪いながらに)改善されているような気もするので、最新作『サタニック・ビースト 禁断の黒魔術』ではどうなっているのか気になるところである。スマホでも高画質な撮影が出来てしまう時代なので、綺麗に撮ろうと思えば撮れるはずだが、それはそれで何かが失われるような気がして寂しい。間違ってもスタイリッシュ教に毒されるようなことだけはあってほしくない。

アラガォン作品におけるグロ描写の特徴はドロドロしていることである。鮮血がピューッと吹き出すだけでなく、血液なのか何なのか分からないゾンビ汁がドロドロヌルヌルと垂れ流される。グロいというよりも汚い。本作のマングローブという舞台はゾンビ汁と相性が良く、カニが動いているだけでドロドロしているし、なんだか気持ち悪い。また、朽ちかけた死体が転がっていても違和感がなく、ただ死体を見つけたくらいでは登場人物が驚かないのも高ポイントである。

時系列の繋ぎ方や生首の移動シーンが意外にも普通に上手くて何だか悔しかった。それ以上に悔しかったのは、ゾンビに付与されている設定が意外にも説得力を持っていることである。男が女装しているとしか思えない老婆は語る「土地が死んでいる。奴らは人間を肥料に変えて植物を蘇らせる」。なんとなくそれっぽい説明ではないか。もっとも老婆が語るだけで物語の進行に活かされることは一切ないので、そこはご安心いただきたい。なお、この話が出てくる女の治療シーンは間延びが酷い。

フォークで突き刺した目玉が茹で卵っぽいというアラガォンらしい安っぽさはあるが、蠢く何かだったりゾンビの顎を引き抜いたりと満腔の気合いが込められたシーンも多い。気持ち悪さへの愛が満ち満ちている。

間違いなく退屈するし普通につまらない。お世辞にも良い映画とは言えない。それなのに余人をもって替えがたい強烈な魅力が三十郎氏を虜にする。この監督は物凄い才能の持ち主なのかもしれないし、ゾンビ的バイタリティ溢れる変態なだけかもしれない。もしかすると後世に名を残す天災なのかもしれない。「とにかくヘンテコな映画が観たい」という気分になった時には「よし!アラガォンだな!」と三十郎氏は強く確信しているのである。