オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『アリータ:バトル・エンジェル』

Alita: Battle Angel, 121min

監督:ロバート・ロドリゲス 出演:ローラ・サラザールクリストフ・ヴァルツ

★★★

概要

サイボーグ少女が戦う話。

短評

まるでジェームズ・キャメロン監督作品であるかのように宣伝されていた一作。Amazonの紹介文も「ジェームズ・キャメロンが放つスペクタクル・アドベンチャー!」である。三十郎氏はこのような宣伝方法が嫌いである。名もなき監督の作品ならば仕方がないと思う面もあるものの、本作の監督はロバート・ロドリゲスであり、キャメロンほどではないものの十分に名の通った実績ある監督である。キャメロンも深く関与しているらしいが、これは流石に失礼である。そうした理由で劇場鑑賞は回避し、ようやくレンタルしての鑑賞である(まともに宣伝していたとしても劇場へ足を運んだのかは大変に怪しい)。

感想

日本の『銃夢』という漫画が原作である。三十郎氏はこの漫画について名前以外は何も知らないと思っていたが、読み方が「じゅうむ」でなく「がんむ」であることが判明し、名前すらも知らなかったことが明らかとなった。従って、原作の再現度や乖離、オマージュといった要素は一切分からない。

兎にも角にもアリータ(ローラ・サラザール)のビジュアルである。snowで変形させたかのような大き過ぎる目によりバランスの崩れた顔に最後まで慣れることはなく、違和感ばかりが残った。率直に言って気味が悪い。不気味の谷の真っ只中である。このデザインの意図は一体何なのだろうか。Wikipediaの記事では「観客にアリータが人間ではないことを思いこさせるための意図的な選択だろう」といった意見が紹介されているが、それだけであれば水中散歩のようなシーンだけで十分に表現可能である。気持ち悪過ぎて感情移入を拒むかのようなデザインにする必要はない。この点については最後まで自分なりの答えすら用意できなかった。特典映像によるとアリータは火星生まれの人間をサイボーグ化したということらしいので、尚更人間の顔と乖離していることが不自然に思える。

大き過ぎる目の作用は、映画にとって逆効果となるものが多かったように思う。まず、気持ち悪い。次に、人間離れし過ぎていることで、彼女が実写ではなくCGであることが強調されてしまう。CGの描写はほとんど実写と区別がつかないレベルにまで進歩している(三十郎氏は見分け方として実写で再現可能かどうかを考える)。それなのに主人公が「私はCGです」と声高に主張しているために、映画全体が「これはCGで描いた偽物です」と言わなくてもいいことを言っているような気がして世界に入り込めない。彼女の顔以外は、明らかにCGでありながらも実写に馴染んでいるので、非情に残念に感じる。

漫画やアニメのキャラクターの目があの大きさであっても問題ないのに、周囲のキャラクターたちは普通に人間なだけに違和感が尋常ではない。パッと見て不気味だと感じるが、これが最初からフルCGのアニメだったらマシだったのだろうか。ビジュアルのインパクトだけが先行し過ぎて、役者の演技からキャプチャーしている感情が伝わってこない。「目は口ほどに物を言う」と言ったものだが、目だけが喋って顔の他のパーツと調和した表情になっていないのではないか。

顔の話しかしていないので、一応ストーリーにも触れておこう。本作の筋書き自体はありふれたヤングアダルト小説の映画化作品と似たようなものであった。主人公の少女がとにかく万能で、イケメン(ヒューゴ役のキーアン・ジョンソンはあまり格好いいとは思わなかったが)とイチャつきながら、自分に秘められた能力を自覚して敵を倒す。見せ場を作るためだけにモーターボールなる競技が登場する。似たようなものと言うよりもヤングアダルト小説の流れそのものである。その背後に描かれている『エリジウム』的な上級専用空中都市ザレムや義体といった要素は面白く、壮大な世界観が垣間見えるが、本作自体が導入編ということもあって、その魅力が100%伝わる内容ではなかった。「とりあえず無難にまとめました」という印象である。(顔が原因で感情移入できないこともあるが)アリータの人格も生意気なティーンエイジャーでしかなく、好きになれなかった。

クリストフ・ヴァルツマハーシャラ・アリジェニファー・コネリー、(ちょっとだけ)エドワード・ノートンと豪華なキャストが揃っている。『フェノミナ』の超絶美少女が、熟れきったガーター姿を披露しており、美しい年の取り方に嘆息する。

特典映像の中では、ロバード・ロドリゲスによる「チョコレート作り講座」が面白かった。あれだけ分厚くて美味しいチョコレートが気軽に食べられるのなら、クズ鉄町の生活水準は低くなさそうである。その分厚いチョコレートの中にはピーナッツクリームのフィリングかたっぷりと入っている。義体を動かすのに十分な熱量を摂取できそうである。