オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『切り裂き魔ゴーレム』

The Limihouse Golem, 108min

監督:フアン・カルロス・メディナ 出演:ビル・ナイ、オリヴィア・クック

★★★

概要

連続殺人事件の容疑者殺しの容疑者の話。

短評

モンスターの出てくるホラー映画みたいなタイトルだが、切り裂きジャック的な内容のミステリー映画である。原題のライムハウスはロンドンの地名なので切り裂き要素はないのだが、邦題が『ライムハウスのゴーレム』でもB級ホラー感は拭えない。内容の分かりやすいこの邦題は、珍邦題が跋扈する中では比較的良い方なのではないか。

あらすじ

1880年。霧深いロンドン。劇作家のジョン・クリーの死体が見つかり服毒自殺かと思われたが、メイドの証言により妻のリジー(オリヴィア・クック)が逮捕される。別の連続殺人事件を追っていたキルデア刑事(ビル・ナイ)の捜査線上にジョンの名が浮かび上がり、キルデアは真相を究明しリジーの罪を晴らそうとする。

感想

真犯人自体は設定を把握した時点での予想通りだったのだが、犯行へと至る推理の過程は全く外れていたと言うか全然推察できなかった。犯人が嘘をついているであろうことは設定から察せられるのだが、その設定が本作にもたらしているものは、嘘よりも強い動機である。そのドラマが悲しくも面白く、「悲劇と喜劇は紙一重」という劇中の台詞をその通りだと思わせてくれる。沼に引きずり込まれて真相を知ったキルデアの心中やいかに。ミステリーの形式を採ってはいるが、過去の出来事から浮かび上がってくる心理面の描写が良かった。

ヴィクトリア朝のロンドンは霧深く薄暗い。切り裂きジャックが出たのもこの時代だし、ホームズがいるのもこの時代(一説によるとヴィクトリア朝は京都にあったそうである。『シャーロック・ホームズの凱旋』はあれで完結なのですか?)。どんなにおどろおどろしい事件が起きても不思議ではなく、それに対応するべく名探偵も生まれる。闇、謎、殺戮、オカルトが程よく交差するこの時代は、ゴシック・ホラーの舞台としてはうってつけで、映画でもよく見かけるように思う。本作のセットも見事である。これだけ頻繁に映像化されるということは、どこかのスタジオに設営されたセットが使い回されていたりするのだろうか。その造られたロンドンを毎回見ることで実際のヴィクトリア朝のロンドンとして認識しているのなら、これはちょっと面白い気がする。

事件の容疑者の一人としてカール・マルクスが登場する。彼はドイツ人だと記憶していたが(その通りドイツ人である)、ロンドンに住んでいた時期があり、亡くなった場所もロンドンなのだとか。他にも本作には喜劇役者のダン・リーノのような実在の人物が登場しており、史実を知っていれば単なるミステリー以上の楽しみ方ができそうである。

キュウリのサンドイッチが登場する。現代で「サンドイッチをどうぞ」と言われてキュウリのサンドイッチが出てくるとガッカリだが、この時代のキュウリは輸入でしか手に入らない貴族専用の高級品である。秘密の趣味を持っていたアンクル(エディ・マーサン)はかなり儲けていたのだろう。

三十郎氏の好きなオリヴィア・クックが出演している。彼女は色々と性的に悲惨な目に遭うが映像的にはスキップされる。代わりに堂々と楽屋で脱いでいるのがアヴァリーン(マリア・バルベルデ)である。トラウマにより妻が果たせない務めを代わりに果たすという仕事も堂々とこなしている。なお彼女は『バスルーム 裸の2日間』という肌色率が限界突破した作品に出演しているので、彼女のおっぱいが気に入った方は是非ご覧になればよいと思う。

切り裂き魔ゴーレム(字幕版)