オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『突撃隊』

Hell is for Heores, 89min

監督:ドン・シーゲル 出演:スティーヴ・マックィーンジェームズ・コバーン

★★★

概要

少人数の分隊で前線を死守する話。

短評

ドン・シーゲル監督、スティーヴ・マックィーン主演の戦争映画。大抵の物語において主人公が愚鈍な上官の命令を無視した行動に出るときは英雄的な戦果を上げるものだが、本作ではそうもいかない。一見正しいかと思われた選択に潜む独善性を暴き出す。

あらすじ

舞台は1944年。所属する中隊が別の前線の支援に行ってしまったため、たった六人でドイツ軍を食い止めなくてはならなくなった分隊の話である。幸いドイツ軍は中隊が移動したことに気付いておらず、ジープを細工して味方が残っていると思わせたり、石を詰めた缶を鳴らして無駄弾を撃たせたり、盗聴用マイクを発見・利用して敵を撹乱する。そんな工作もいつまでもは続かず、襲撃してきたドイツ兵を全滅できずに数人逃してしまう。こちらの数的不利が露見すれば全面的な敵襲は避けられない。ここで分隊が採るべき行動は何なのか。

感想

マックィーン演じるリースは、勲章を受けた優秀な兵士だが、おイタをやって降格された補充兵。「あぁ~早く帰国してぇ」的な温い雰囲気が蔓延していた分隊において、寡黙で人を寄せ付けずギラついた彼の存在は異質である。演じているのがマックィーンなので当然格好いいし、装備も他の兵士たちがライフルなのに対して一人だけサブマシンガンと、これまた格好いい。どう見ても百戦錬磨の強者である。

そんな彼が件の状況において、数的不利が露見する前に敵のトーチカ(機関銃を配置した小型要塞)を奇襲すべきと主張する。ところが分隊の指揮官ラーキンの答えは「ノー」。命令は待機である。ここで三十郎氏は考える「いや、行けよ!呑気に待ってても殺されるだけだろ」。リースの視点で映画を観ているので、当然にそういう思考回路になる。

幸い(?)ラーキンが砲撃を受けて死亡し、リースは仲間二人を従えてトーチカへと接近する。ところが、トーチカの前に広がる地雷原にヘンショー(ジェームズ・コバーン)が引っ掛かり、背負っていた火炎放射器が炎上して爆死。作戦は失敗に終わる……と同時に中隊が戻ってくる。このままドイツ軍の襲撃を受ければ全滅が確定の状況においてリースの選択は正しいかに思われた。しかし、結果的には指示通りに待っていれば中隊と合流できていた。

彼の行動は正しかったのか、それとも間違っていたのか。結果としては間違っていたことになるが、彼に全面的な否があるとも思えない。観客の三十郎氏としては主人公のヒロイックな行動を“物語的に正しい”と捉えてしまうし(この物語的な正しさは現実における思考を侵食する)、戦場に生きてきたリース自身にとっては何もせずに死を待つ選択肢はなかったはずである。結局何が正しいのか分からない。この失敗の後、リースのギロリとした眼光は鳴りを潜め、彼の中で信念や自信が失われたことが分かる。

映画としては大きな見どころとなる総攻撃のクライマックスは実質的にエピローグと言ってもよい。これまで戦場を生き抜いてきた信念を揺るがされたリースが、無謀とも言える特攻を仕掛け、自らの犠牲と引き換えにトーチカを爆破して映画は終わる。前夜の失敗の時点で彼の今後は失われていたのである。戦場にしか生きられない男は戦場で死ぬしかない。

それにしても『Hell is for Heores』という原題は格好いいな。

突撃隊 (字幕版)

突撃隊 (字幕版)