オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『恋のロンドン狂騒曲』

You Will Meet a Tall Darker Stranger, 98min

監督:ウディ・アレン 出演:ジョシュ・ブローリンアンソニー・ホプキンス

★★★

概要

三組が別れて三組がくっつき二組の雲行きが怪しい話。

短評

ウディ・アレンが出演していないタイプのウディ・アレン監督作。このタイプの映画では、大抵の場合ウディ・アレン役と呼ぶべきキャラクターがウディ・アレンを代演しているのだが、本作には特定のウディ・アレン役はいなかったように思う。ジョシュ・ブローリン演じるロイの“一発屋に終わりかけている売れない作家”という設定はウディ・アレン役っぽいが、キャラクターの方向性は大きく異なる。とは言え、全てが空転した挙げ句に落ち着くところに落ち着くのはウディ・アレンらしいか。

あらすじ

人間関係が少々複雑である。離婚したヘレナとアルフィ(アンソニー・ホプキンス)夫妻の娘がサリー(ナオミ・ワッツ)。その夫がロイ。ヘレナはインチキ霊媒師のクリスタルにハマってジョナサンという男と恋に落ち、死への不安から健康に目覚めて色気づいたアルフィは女優(=コールガール)のシャーメイン(ルーシー・パンチ)と再婚する。サリーは勤務するギャラリーのオーナー・グレッグ(アントニオ・バンデラス)にご執心で、ロイは向かいに住む赤い服の美女ディア(フリーダ・ピントー)から目が離せない。至るところで恋の花が咲き乱れるが、ウディ・アレン役がいないだけに中心となる人物がおらず、少々とっ散らかった印象が残る。

感想

男女の愚かな営みをユーモラスに描いている。特に男二人がとても間抜けである。一人は、老いてから色気づき自分の半分の年齢の娼婦と結婚する。もう一人は、医大を卒業していながら「小説で一発当ててやる」と一発だけ当てて、その後は実質ヒモ状態。設定からしてどうしようもない阿呆である。阿呆な男を見るという行為は楽しいもので、「そんなの上手くいくはずないのに」と分かるものほど面白い。それはきっと彼らがそうする理由が嫌でも分かってしまうからである。もしそうなら、女性は阿呆な男を見るよりも阿呆な女を見る方が楽しいのかもしれない。

最も素晴らしいシーンは、ロイがサリーと別れてディアの部屋に転がり込んだ時に、向かいに住むサリーの姿を見るシーン。これまでサリーと共に住んでいた時は、向かいに住むディアの赤い下着姿をウットリと眺めていたが、ディアの部屋からサリーの黒い下着姿を見ると、それがとてもセクシーなことに気付く。いつだって隣の芝は青い。そして、大切なものは失って初めて気付く。

人生を何とかコントロールしようとする者たちが悉く失敗し、全てをインチキ霊媒師に委ねるヘレナだけが結果的に上手くいくというのは、どうにも納得したくないが、自分でどうにか出来ることなんてたかが知れている。なんともドライで皮肉の効いた結末である。

恋のロンドン狂騒曲 (字幕版)