オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『L.A.コンフィデンシャル』

L.A.Confidential, 137min

監督:カーティス・ハンソン 出演:ケヴィン・スペイシーラッセル・クロウガイ・ピアース

他:アカデミー賞脚色賞(カーティス・ハンソン)、助演女優賞キム・ベイシンガー

★★★★

概要

カフェで発生した殺人事件に裏がある話。

短評

有名ではあるが、賞レースで『タイタニック』の割を食った名作である。同じくアカデミー賞の最多記録となる11部門を受賞した『ベン・ハー』と『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』の犠牲者となったのは、それぞれ『或る殺人』と『ミスティック・リバー』だろうか。華々しい受賞記録の影にはいつだって薄暗い犯罪映画があるのだ。

あらすじ

ロサンゼルスのギャング王ミッキー・コーエンが脱税で逮捕され、暗黒街の玉座空位となった時代、被害者に元警察官を含む殺人事件が発生する。黒人が逮捕され、それは単なる強盗事件かと思われたが……。

感想

本作は話が抜群に複雑な上に説明も少ないので、ついて行くだけで必死である。事件の裏に隠された陰謀の黒幕が分かってすっかり納得していたのだが、よく考えてみるとナイト・アウル事件の直接の犯人が誰だったのか分かっていないことに今気付いて大変に混乱している。黒幕が自分で手を下したのか。それとも冤罪の現場にいた部下がやったのか。分からん。三十郎氏が見落としただけで劇中で言及されているのだろうか。しかし、映画の中心となる事件の犯人が分かっていなくても面白いというのは凄い。阿呆には理解できないが阿呆でも楽しめる。映画の中心には事件があるが、その事件から見えてくる人間や社会の腐敗こそが物語の核なのである。

トリプル主人公とでも言うべき三者三様のキャラクターが面白い。バド(ラッセル・クロウ)は、真っ直ぐで不器用ないわゆる刑事ものの主役らしいタイプのバイオレンス中堅。エドガイ・ピアース)は、一見すると正義漢だが実際は出世の鬼の若手インテリ・エリート。ジャック(ケヴィン・スペイシー)は、刑事ドラマの顧問のポジションに拘るちょいワルのベテラン。この三人の強烈な個性がぶつかり合ったり絡み合ったり変化しながら事件の真相へ迫ると同時に、誰が正しいというわけでもない正義のあり方のようなものも見えてくる。

過去の作品でケヴィン・スペイシーを目にする度に、映画界は本当に惜しい人を亡くしたものだと残念に思う。激情型のバドや正義について悩むようなエドのキャラクターは分かりやすいが、自分がどうして警察を志したのかは忘れてしまったけれど、かつて持っていたはず正義を捨て切ることまではできないくたびれたおっさんという繊細な役柄が抜群に響く。賄賂の50ドル札を眺める表情が本作のハイライトと言ってもよい。

ヴェロニカ・レイク似のはずのキム・ベイシンガーだが、あまり似ているようには思えなかった。三十郎氏の知るヴェロニカ・レイクは『奥様は魔女』出演時の19才の姿だけなので、本作出演時40代なかばのキム・ベイシンガーと比較するのは少し無理がある。ただ、彼女はこのハンディキャップを物ともせず、見事にファム・ファタールを演じ切って、本作が2部門でしか獲得できなかったオスカーの内の一つを獲得している。彼女は娼婦モードの白いドレスを身にまとっている時よりも、登場シーンで白と黒のフードを被っている時の方が、オールド・ハリウッド感があって素敵だった。