オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ミラノカリブロ9』

Milano Calibro 9(Caliber 9), 101min

監督:フェルナンド・ディ・レオ 出演:ガストーネ・モスキン、バルバラブーシェ

★★★

概要

消えた30万ドルと出所したての容疑者。

短評

紹介文の“タランティーノが師と仰ぐ”の文言に惹かれて観てみたが、確かに彼が好きそうな作風だった。冒頭のシークエンスで紙の束とすり替えられた現金の受け渡しに関わった三人が、拷問の末にダイナマイトで爆殺されるという豪快さがグッとくる(拷問中に雑に放り出されるImelde Maraniのおっぱいも素敵)。このシークエンスで心を鷲掴みにされたなら映画の残りも楽しく観られるのではないかと思うが、ここがピークだったという感じはする。

感想

件の現金受け渡しシークエンスは、どうしてこんな凝った方法を採る必要があるのかさっぱり分からない複雑さである。鳩の群がるドゥオーモ前の広場から地下鉄へ移動し、三人の男女を介して持ち主へと渡る。そして最初に広場で監視していた男が三人目の男から受け取るのだから完全に意味不明である。こいつが一人で運べば良かったではないか。ただ、この受け渡しがどうしようもなく格好いい。ロック調のBGMも良いし、符牒や電話のベルが鳴る回数で人が動く無意味にスパイ映画っぽい要素があるのも素敵である。そして、金が紙にすり替わったことに気付き爆殺まで持っていくまでスピード感も凄い。

主人公のウーゴ・ピアッツァ(ガストーネ・モスキン)は少し丸くなったイタリア版ステイサムといった趣の渋くて格好いいハゲである。ホテルの部屋での情事の最中にも鍵を掛けない豪胆なこのハゲは、ギャングと警察を相手に回しても顔色一つ変えずにプカプカと煙草をふかす余裕の持ち主である。ギャング、警察、大金、美女、暴力と盛り沢山ながら、静寂の要素が強くて中弛みしそうな物語を、このハゲの魅力が引っ張っている。やっぱりハゲは格好いいのだ。もしウーゴに髪があったなら、周囲に溶け込んでしまい凡庸な映画になったに違いない。

格好いいハゲには美人の恋人がいる。ウーゴの恋人ネリー(バルバラブーシェ)のダンスシーンは桃色眼福である。彼女がセクシーな衣装で腰をくねらせて踊るシーンが様々なアングルから長々と映し出されるが、中でも下から見上げる角度で捉えたものが興奮する。きっと客席からダンサーを見上げる角度と同じなので臨場感があるのだろう。ほどよく引き締まったお腹とお尻が最高にセクシーで瞬きできなかった。しかし、彼女には別の男がいたのである。美女は男が放っておかないのか。それともやはり若くてフサフサのイケメンの方がよいのか。

駅のトイレに公衆ヒゲ剃りがあるのが面白かった。他にも車がやたらと小さかったりするのがイタリア映画らしい。

ミラノが出てきたので少し思い出語りをしよう。三十郎氏がミラノを訪れた時は日程の組み方が悪く、昼前に到着し翌日早朝には空港へ向かうという突貫ツアー的な忙しさであった。とりあえず壮大なドゥオーモを眺めて「おぉーっ!」と間抜けに口を開け、本場のミラノ風カツレツに舌鼓を打つ他はほとんど何もできなかった。あとはオープン・カフェで砂糖ドバドバのエスプレッソを飲み、「俺は今、これまでの人生で最高にオシャレなことをしている」と満足したくらいである(このオシャレ行為ランキング一位は未だに更新されていない)。

一方で『最後の晩餐』を見られなかったのはとても残念に思っている。他にもミラノには見るべきものやするべきことが沢山あるはず。これから訪れるという人はどうか日程に余裕を持たれますように。一つの街当たりの日数を削るよりも訪れる街の数を削った方が充実した観光ができるのではないかというのが、この件から三十郎氏が得た教訓である。

そのように忙しないミラノ観光の中で、ホテルへの帰路で見つけたヤマト・ショップなる店に展示してあった等身大デビルマンにやたらと興奮したことを何故か思い出す。「すげえ!デビルマンだ!」と盛り上がったが、デビルマンの漫画を読んだこともなければアニメを見たこともない。界隈で語り草になっている映画すら観たことがないというのに。きっと疲れていたのだ。

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ミラノカリブロ9

ミラノカリブロ9