オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ククイ 伝説のブギーマン』

Cucuy: The Boogeyman, 94min

監督:ピーター・サリヴァン 出演:マリソル・ニコルズ、ベラ・スタイン

★★

概要

メキシコ版なまはげ伝説。

短評

プライムビデオの新着リストにあるのを発見したが、タイトルで検索しても情報が出てこないというのが気になる映画である。今の時代にネットで情報が見つからないホラー映画なんて“いわく付き”感があって素敵ではないか。もっとも中身は単なるB級ホラー映画で、英語の原題で検索すれば普通に情報が出てくる。

あらすじ

ヒスパニックのお婆さんが、テレビゲームを妨害されて悪態をつく孫に「お母さんに逆らうとククイが来るわよ」と脅しをかける。要するに“なまはげ”である。世界中どこにでもあるブギーマン伝説の内、メキシコに伝わるククイなる怪物が本作には登場する。ククイはメキシコのブギーマンだが舞台はアメリカだし、とある街で子供たちが次々と消え、遂には身内を拐われた主人公がククイに立ち向かうという展開は、他の映画でもよく見かけるもので珍しくもなんともない。

感想

なまはげのような存在が世界中にいること、そしてメキシコではどういう造形の怪物なのかが分かるのは楽しいが、文化的に特徴的なところはなく、「どこも同じなんだな」という感想しか持てなかった。主人公ソフィアの母が「外見で枠にはめられるのが嫌」と自分のルーツから逃げているエピソードが面白かったので、この点はもう少し強調してもよかったように思う。

子供が消える→ククイの仕業らしい→対決の定番の流れの中に起伏をつけたかったのか、ソフィアの近所に怪しい男が引っ越してくるというエピソードが挿入される。ソフィアは彼を怪しみ、留守中に妹アメリアを潜入させるとククイの資料が見つかったりするのだが、これはどう考えてもミスリードと分かってしまうので、尺稼ぎにしかなっていなかった。最初から最後まで工夫の無い映画なのである。

ククイに拐われるのは、動画投稿オタクのハビエル、自撮り少女のシエラ、悪ガキのトラビス、そしてソフィアの妹で耳の不自由なアメリアである(この耳が不自由という設定は上手く活かされない。逆に、そんなことで?という使われ方なので別の設定を用意した方がよかった)。それほど悪い子でもない彼ら(特にアメリアは何も悪くない)がククイに拐われる理由が、本作では最も面白い点である。

彼らの共通点は、一年前に自殺したステラという少女の自殺配信動画を見ていたことで、アメリア以外の三人は自殺を煽るコメントをしていた。ステラの母親が「なんで私の娘だけ死ななきゃいけないのよ!」とククイを召喚し(ククイは悪い子のところに来るのではなく復讐のために召喚できるジョン・ウィック的ブギーマンなのだ!)、動画の視聴者が拐われるのである。逆恨みもいいところだ!

「私は理想の私になれないの!もう嫌!」と構ってちゃん配信をしながら道に飛び出し、車に轢かれてグェーッと死ぬ動画の視聴数が、たったの四人である。これは悲しすぎる。確かに死にたくもなる。こうやって自殺者を嘲笑っていたら三十郎氏のところにもククイがやって来るかもしれない。もうこれは怖くて眠れな……くはならない。ぐっすりと眠るのでサキュバスが来てくれないだろうか。

 

*追記

2019年12月15日現在、当記事を含めて普通に検索結果に出てくるようになっている。既にいわくつきでもなんでもないホラー映画である。