オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『バタリオン ロシア婦人決死隊VSドイツ軍』

Батальонъ(Battalion), 123min

監督:ドミトリー・メスヒエフ 出演:マリア・アロノヴァ、レスヤ・アンドレーワ

★★★

概要

第一次世界大戦時のロシアで女性だけの部隊が結成される話。

短評

バタリオン(Battalion)とは、「大隊」という意味の英語である。実話を基にした真面目な戦争映画である。タイトルだけ見て、ナチスが出てくる『バタリアン』の亜種的な阿呆映画を間抜けにも期待した三十郎氏は無惨にも裏切られた。

あらすじ

舞台は1917年。皇帝の退位により政情が不安定化し、前線の士気は下がっていた。ドイツ兵による酒を用いた買収工作が功を奏し、ロシア兵はドイツ兵と楽しく馴れ合っていた。そんな状況下で婦人部隊“バタリオン”が結成される。

感想

最近の映画にありがちな軽いノリで「女だって男に負けず戦えるのだ」と主張するような安っぽい面は確かにある。漫画チックな怪力デブ女がいたり、キャーキャー喚きながら温い雰囲気で訓練していたり、格闘訓練で「イヤです!殴れませ~ん!」と泣いてみたりと、「お前ら、自分で志願したんだろ……。これから戦場に行くんじゃないのかよ……」と呆れるような姿を見せておきながら(ベッドを巡っての喧嘩やユダヤ人差別は男でも同じことがありそう)、やる気のない男との対比によって彼女たちの決意だけを強調しているところがある。

しかし、本作が面白いのは彼女たちが訓練を終えて出兵してからである。これまでと同じように酒とソーセージを携えて買収にやって来たドイツ兵を捕虜とするも、訓練ではできていた塹壕の飛び越えができずに足を挫いて一人が離脱し、残ったもう一人は連行中に手を後ろで縛った捕虜にあっさりと殺されて、その弱さを露呈する。その後は奇襲をかけたりかけられたりで一進一退の攻防を見せるものの、最終的には絶体絶命の場面で男部隊が駆けつけてくれるというオチがついている。

バタリオンに撮影部隊が随行している描写からも分かるように、彼女たちは所詮は士気高揚のためのプロパガンダ要員でしかなかった。サボっている男兵士が「もうすぐロシアは分割されるから戦っても意味なんてないぞ」と言って女たちを怒らせるが、その後ロシア革命により戦線から撤退したことを考えれば実は彼らが正しかったのである。彼女たちは戦死した家族の敵討ちや愛国心といった様々な戦うべき理由を軍に利用されただけなのである(ちなみに、訓練を担当する夫と逢い引きするためという不純な理由で入隊した女もおり、彼女はきっちりと戦死する)。

バタリオンの兵士たちは全員丸刈りにされるが(この風景を見ただけで何人かは逃げ出す)、ロシア美女は丸刈りでも美人であった。ただ、この状況下でもちゃんとメイクしているシーンが多いのはいかがなものかと思う。一方で、隊長のマリア・ボチカリョーワは迫力満点である。本人の写真ともなんとなく似ている。

ドイツ兵に買収されて勝手に停戦していたというエピソード自体が面白いのだが、その背景にある“兵士委員会”という制度が興味深い。ロシア軍は隊毎に兵士委員会を設置し、そこで決められたことは軍の上官であっても簡単には覆せなかったらしい。ものすごく民主的な制度で素敵だが、これで戦闘が成立するのか。いや、しなかったから停戦したのだろう。やはり民主的で素敵である。

戦闘シーンはなかなか迫力があった。ただ、ドイツ軍がガスを放って両軍ともにマスクをしているシーンはとても見分けがつきにくく、戦闘よりも軍服を見る必要があった。また、ドイツ兵が銃を撃てばよい場面なのにナイフで殺そうとし、その間に女兵士が銃で殺すという不毛な演出が複数回あるのもいただけなかった。