オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『超巨大ハリケーン カテゴリー5』

Category 5, 87min

監督:ロブ・キング 出演:バート・レイノルズC・トーマス・ハウエル

概要

熱帯低気圧が海底火山の噴火で温まる話。

短評

台風の夜に三十郎氏は考えた。折角だから台風っぽい映画が観たい。

しかし、プライムビデオで配信中の『シャークネード』シリーズは既に観てしまったし、最近のハリケーン映画『イントゥ・ザ・ストーム』も消化済み。状況的に近そうな『フラッド』は配信していないし、90年代の名作『ツイスター』は有料である。『超強台風』という中国映画も気になるがこれまた有料。『テイク・シェルター』も有料。巡り巡って辿り着いたのが、いかにも低予算で駄目そうな本作である。

感想

長々と前置きを書いたことからも察していただけるとは思うが、どうしようもないレベルのクソ映画である。ハリケーン的で迫力のある映像や倒壊した建物の映像のほぼ全てが記録映像という一切のやる気を感じないテレビ映画である。そもそも本作でハリケーンは描かれていない。せいぜいちょっと強めの雨である。

ダーウィンアワードを狙うのでなければ、本作の登場人物の行動の逆をいくと良い。巨大ハリケーンが迫っている時に「この家は安全だ。俺は家を守る」と留まってはいけない。だいたい「家を守る」って具体に何をすると言うのか。ハリケーン相手に家に留まって何を守れると言うのか。火事場泥棒が心配なら貴重品を持って避難すればいい。

そんな馬鹿な死に方をした男と女はダーウィンアワードの目的に反して遺伝子を残してしまう。彼らの遺伝子を受け継いだ娘ビクトリアは当然阿呆である。彼女が大学生へと成長し、再び巨大なハリケーンアメリカに迫る。ジャーナリズムを専攻する彼女は、これぞ好機とばかりに取材に乗り出す。しかし、Youtuberに毛の生えていないレベルの素人が災害の現場に乗り込んでどうなるのかはお察しの通りである。

ビクトリアには祖父に避難を促しに行くという目的もあったが、自己顕示欲が先を行くのでそこまで辿り着かない。そこで彼女の叔父一家が避難を促しにいく。もちろん叔父一家も阿呆遺伝子の持ち主である。そしてその頂点に位置する祖父は超弩級の阿呆である。

この祖父は息子からの電話を取らず、また自分で情報収集することなく「大丈夫」と決めつけて家から動かない。息子がやって来ても「この家は俺が30年前に自分で建てたんだ。どこよりも安全だ」と頑として動かない。カウチに腰掛け、手にはショットガン。一体彼は何と戦っているのか。銃でハリケーンは撃退できない。結局、孫に説得されて避難を決めたときには既にハリケーンが襲来しており、避難所に辿り着くことなく、周辺の民家に不法侵入して撃たれる。どうしようもない阿呆である。

この痴呆老人から学ぶべき教訓は、情報収集を大切にし、早めの避難を心がけること。これまで大丈夫だったから今回も大丈夫と正常性バイアスに囚われないこと。銃で対処できる相手を見極めること。ハリケーンが来てからでは遅いので早く決断すること。学ぶべきことが沢山あるように思うが、これくらいのことは改めて学ぶまでもなく体得しておくべきである。

そんな痴呆老人を演じているのがバート・レイノルズ。ショットガンを手にタフガイぶっているが、すっかりショボくれているのが酷いキャラクターと相まって悲しくなる。

全く見習うべきところのない行動ばかりが出てくるが、彼らは生き残る。映画だからとハッピーエンドにする必要はない。このくだらない映画に最低限の教育的目的を持たせるためにも、彼は皆きっちり吹き飛ばされて死んでおくべきだったと思う。

本作の更に酷いところは、ディザスター・ムービーですらない点である。阿呆な人物たちの阿呆な行動を描いているだけで、パニックに陥る街の様子や被害の様子は一切描かれない。一家以外の人間は大人しく家でテレビを見ているだけである。一家全員が揃ったら、寝ている内にハリケーンは過ぎ去っていましたという酷いオチまでついているのだから褒めるべき点が一つもない。

本作を観た者が受ける心理的被害は甚大だが、劇中での物理的被害は極小である。今回の台風の被害がこれくらいショボいものでありますように。