オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ジョン・ウィック:パラベラム』

John Wick: Capter 3 - Parabellum, 131min

監督:チャド・スタエルスキ 出演:キアヌ・リーブスハル・ベリー

★★★★

概要

犬の命が人の命よりも重い世界の話。

短評

目新しさという点では限界を迎えてきている感じがするが、キアヌの「自分の限界がこの映画の限界になる」という格好良すぎる言葉通りにまだまだ頑張るシリーズ三作目。多少の不満はあるものの、この映画を三つ星にしてしまうと今後アクション映画に四つ星をつけられなくなる気がする。未来の自分に対する忖度評価である。身の回りにいる人は全員殺し屋であり、身の回りにある物は本でも何でも殺しの道具である。読んだ本をちゃんと元の場所に戻すジョンは偉い。

あらすじ

コンチネンタル内でサンティーノを殺したことにより、あらゆる殺し屋から狙われることになったジョンが逃げ回り、撃退し、生き残る道を探る話である。全ては妻と過ごした思い出を守るために。

感想

前作から地続きの物語となっているため最初からアクセル全開である。美術館的な魅力の武器展示室でのナイフの投げ合いから馬でニューヨークを駆け巡るシーンと見せ場を惜しむことはない。ジョンを追う殺し屋たちが馬に蹴られるシーンは笑えるのだが、死亡者が出たというニュースを見かけることもあるので威力は相当に高いはずである。キリンがライオンを蹴り殺すとも聞くし、草食動物は実は強い。これは「世捨て人みたいなおっさんが実は伝説の殺し屋だった」というジョン・ウィックの設定と繋がっていると言えるかもしれない。

前作のローマ同様にニューヨークを一度離れることで目先を変えたのは良かったが、ソフィア(ハル・ベリー)の活躍は余計である。「今回は世界中の殺し屋から追われるので流石に一人ではどうしようもないのかな」とも思ったが、どんなに絶望的な状況であろうとも、それを一人で乗り切ってしまうジョン・ウィックが見たいのである。ベラーダ邸から逃亡するシーンはソフィアの活躍が長過ぎて、「違う!もっとジョンを見せろ!」と不満に感じた。二匹の犬の活躍は面白かったので、結局はジョンの劣化版でしかない人間の活躍を見せられてもジョンの方を見たくなってしまうのである。ジョンが好きという理由で映画館に足を運んでいるのだから。今回は共闘路線かと思ったらカサブランカの戦いだけでソフィアが離脱したのは良かったが、それだとなおさら彼女の活躍は取って付けた感がある。

左手薬指を失い、臭そうになったスーツを一新してニューヨークへ戻ったジョン(お風呂が出てきたときは安心した)。今回のラスボスはユル・ブリンナー伊武雅刀と足して二で割ったような外見の寿司職人ゼロ(マーク・ダカスコス)である。彼の弟子の忍者集団(?)たちがとても素早くて、これまでの戦いの中では最もジョンが負けに近づいた瞬間だと思う。彼らがジョンのファンではなく、戦いを楽しもうとせず最初から全力で殺しにかかっていたら殺られていたのではないか。ガラスを利用した戦いの舞台は鏡張りの部屋の延長だが、忍者スキルと相まってなかなか混乱させてくれた。

聖域指定を解除されたコンチネンタル内での銃撃戦は圧巻。「Guns, lots of guns」にはもちろんニヤリとさせられるし、水の抵抗を利用した擬似的なバレットタイム的演出もあったりしてサービス満点である。スーツでも銃弾を防げる世界なので、フルアーマーの相手には通常の銃撃が効かず、ジョンが何度も撃ち直したりヘルメットのバイザーを上げて殺すのは笑える。その後は「もっとデカい武器が要るぞ」と装備を整えに戻り、ショットガンでスラッグ弾をぶっ放すと、ヘルメットごと吹き飛ぶので迫力満点である。この“迎え撃つ”シークエンスは、前作から続く追われる展開の中では新しい要素だろう。

三部作で完結かと思いきや完全に次回作へと続く終わり方だった。一作目はジョンが標的を追う物語、二作目は追う者から追われる者に転換する物語、そして本作は追われる物語である。次はバワリー(ローレンス・フィッシュバーン)と共に主席連合に喧嘩を売るはずなので、再びジョンが標的を恐怖に陥れる“追う者”へと変貌した姿を期待したい(準備期間中に顎のたるみを絞ってくれればなお良い)。主席連合も指をくわえて殺られるのを待っているはずはないので、ジョンが簡単に無双することはないだろう。追う者としての立場をどうやって活かすのかが、マンネリ化を防ぐ一つの鍵となりそうである。いずれにせよ、次回作はジョンが首長から指輪を取り戻す話になるだろう。

他の注目点としては、マーカス以来登場していない(していたらジョンは死んでいたであろう)スナイパーが出てくるか否か。あれだけ街中を歩いて周囲の全員から狙われているとなれば、一人くらいは遠くから狙ってくる奴がいるはずだが、それをやると映画にならないのか。そして、今度こそピットブルに名前はつくのか。

ウィンストンの扱いはどうなるのだろう。ジョンと共に反乱を起こすわけでもなく、主席連合に従うわけでもない。どう見てもジョンに肩入れしているとしか思えなかったが、あれが彼なりの中立のあり方であり処世術なのだろうか。並々ならぬ只者ではないオーラを発していたシャロンだったが、身のこなしやリロードの滑らかさから察するに、本職の殺し屋たちには敵わないか。

アイキャッチ画像が欲しくてAmazonで商品検索したら、既にパッケージ版が発売済みである。次回作は内容云々と同様に公開時期の方も頑張っていただきたい。これだけ日本要素を入れるサービスをしてくれたのに、世界中で最も(そして断トツで)公開の遅い国が日本だなんて申し訳ないし寂しいではないか。『エンドゲーム』から逃げ『ゴジラ』から逃げしている内に公開時期を逸して、挙げ句『ジョーカー』に話題を食われたのでは単なる阿呆である。元々極端にクオリティの高いB級映画のノリなのだ。大作に興行で負けるのは仕方ないとして、せめて早く観せてほしい。

 

*追記

バレリーナ』というスピンオフの企画が進行中だそうである。本作で痛々しいまでにシゴカれていたあの美しいバレリーナユニティ・フェラン)の物語だったりするのだろうか(役者の演技キャリアから考えるとその可能性は薄い)。監督は『アンダーワールド』のレン・ワイズマンらしいので、あまり期待しないで本編の方の続きを待ちたい。

ジョン・ウィック:パラベラム(字幕版)

ジョン・ウィック:パラベラム(字幕版)

  • 発売日: 2020/02/19
  • メディア: Prime Video