オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『アバンダンド 太平洋ディザスター119日』

Abandoned, 86min

監督:ジョン・レイン 出演:ドミニク・パーセル、ピーター・フィーニー

★★★

概要

男四人、狭い船内、119日間。何も起きないはずがなく……。

短評

1989年に起きた実話である。そして何かが起きるのは最初だけである。嵐に遭って船が転覆する(邦題のディザスター要素はここで終わり)。三胴船は一度転覆するとひっくり返せない。船内には短距離無線しかなく、救難信号も届かない。119日間に渡って男たちが海を彷徨う物語である。

感想

邦題はパニック映画的だが、とても静かな映画である。静か過ぎるくらいである。転覆後の最大の危機は水が底を突くというもので、後は小さな仲間割れがあるくらい。最大の危機も意外とあっさり切り抜けるので、地味という印象は拭えない。

特徴的なキャラクターは船長のジョン。他の乗員が何かをしようと藻掻く中、彼は冷静なのか諦めているのか分からない理屈を並べて否定し続ける。否定ばかりで何もしない。これにはイライラさせられる。酷いキャラクターだと思って観ていたのだが、無事上陸後にも素直に喜べない、海にしか居場所のなかった彼の姿を見せられると、それまでの有り様にも納得できるような気がしてしんみりさせられる。

危機の描写や仲間割れはありきたりである。悲壮感もない。雨水の回収や、魚や鳥の捕獲に成功するシーンは楽しいものの、海を彷徨っている本編は正直面白くない。面白いのは上陸後で、彼らはなんと出発地であるニュージーランドに戻ってくる。上陸地の近くにあった民家に不法侵入し和んでいたところを警察に見つかり、「我々は消息不明になっていた船の乗員です」。当然信じてもらえず、嘘つきだと疑われる。

この件が面白いので、疑われるところを冒頭に持ってきて、日誌や写真で彼らの主張を証明する形で航海の様子を描けばよかったのではないかと思う。漂流そのものよりも無事に帰ってきても周囲に受け入れられない──ハッピーエンドにならないことの方が興味深かったので、その時の心情を丁寧に描いてほしかった。調査で事実が確認された後もなんとなく後味が悪い結末になっており、状況の特殊性としてはこちらの方により興味が湧く。

それにしても邦題でいつ助かるのかネタバレしてしまうのはいかがなものかと思う。

ちなみに、ちょっとだけサメが出てくるので、三十郎氏の中ではサメ映画ということになっている。サメかどうか分からない生物が出てきてもサメ映画になるのだから、サメが出てくれば全てサメ映画である。