オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『PRESSURE プレッシャー』

Pressure, 91min

監督:ロン・スカルペロ 出演:マシュー・グッド、ダニー・ヒューストン

★★

概要

海底パイプライン保守のお仕事。

短評

水深200メートルでの作業中に海上で嵐に遭遇した母船が沈没し、4人のダイバーが深海で作業艇に取り残される話である。救助を待つ間にも刻一刻と酸素が減っていくという極限状態に恐怖する前に、「えっ、これ大丈夫なの?ありうるの?」的な描写や「最初からそれやっとけよ」的な結末に混乱させられて十分に楽しめなかった。

感想

上述の状況下でなんとか試行錯誤してみたり、仲間割れしてみたりというシンプルな映画である。状況が状況だけにクルーに出来ることは限られているし、いざ何かやってみても酸素を無駄に消耗するだけだったりと上手くいかない。『海底47m』のサメのような飛び道具が出てくることもなく、徐々に消耗し追い詰められていく息苦しい姿だけで勝負した硬派なソリッド・シチュエーション・スリラーと言える。

最初に「ん?」と思ったのは、海底に降り注いでくる母船の乗員たちの死体である。映画の冒頭でダイバーたちに対して偉そうに振る舞う社員が最初に落ちてくるのだが、どうして彼は船外に投げ出されるような場所にいたのだろう。船が大破するような大きな嵐なら、そもそも保守作業を延期すべきだし、遺体は見つかるのに沈んだとされる母船が見つからないのも腑に落ちない。中国漁船から連絡が入るまでの時間も短く、想像される嵐の規模の割に過ぎ去るのも早い。ところで、人間が溺死すると水深200メートルまで沈むのだろうか。

次の「ん?」が一番驚いたのだが、ミッチェル(マシュー・グッド)が作業中に気を失い、ハーストがアタフタしているところで、エンゲル(ダニー・ヒューストン)が素潜りで救出に動く。調べてみるとハーバート・ニッチというオースラリア人が水深214メートルという記録を持っているらしいが、地上と同じ気圧に与圧されているであろう艇内から水深200メートルの世界に装備なしでいきなり飛び出しても大丈夫なのだろうか。この時点で恐怖がリアリティを失ってしまい、(三十郎氏が勝手に掲げた)硬派なソリッド・シチュエーション・スリラーの看板を下ろすことになった。もしこれが科学的に正しい描写なら、三十郎氏の見方が間違っていることになるがどうなのだろう。

「最初からそれやっとけよ」という結末は、『キューブ』のように一番近いところにあったのに思いつかなかったような場合にのみ許される。本作では作業艇を可能な限り浮上させて最後は生身で決死の浮上を試みるという作戦を採る。これは減圧症のリスクがあるためなるべく避けたい最終手段なのだが、これが最終手段として残されているのなら、他に無駄な行動をして酸素、装備、人員の三つを消耗する必要はなかったということになってしまう。せめてこの手段が残されていることは提示した上で、いかに危険でやるべきではないかをアピールしておくべきだった。浮上を隠し玉にしたのは失敗である。

ベテランと新人のキャラクターや関係性は良かったと思う。

海中で全裸の妻(Gemita Samarra)に食べられる夢というのは、フロイト先生的にはどんな意味があるのだろう。このシーンの映像は水中に広がる血液が幻想的で美しかった。本業はスタントウーマンであるらしい演者の優雅なや泳ぎや引き締った肉体も美しかった。