オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ジョン・ウィック』

John Wick, 101min

監督:チャド・スタエルスキ 出演:キアヌ・リーブスウィレム・デフォー

★★★★

概要

伝説の殺し屋が犬殺しの犯人を始末する話。

短評

最新作の公開に向けて復讐、否、復習である。それにしても本国での公開から半年近く遅れた上、『ジョーカー』の公開日にぶつけるなんて日本の配給会社はヒットさせるつもりがないのだろうか。それでもIMAXで観られることだけは嬉しいのでよしとするか。キアヌも来日してくれたことだし。また、本作は本国での公開から1年遅れ、2作目も3作目より長く遅れたようなので進歩は見られるのである。

感想

主人公ジョン・ウィックは、普段は世捨て人のような生活を送っているが、いざ仕事となれば完璧に決めてみせるというまるでキアヌ・リーブス本人のような役である。大切な人を失い車だけが友達というのもキアヌっぽい。そんなわけで最高のハマり役である。黒のスーツをビシッと決めて確実に敵を仕留めていく姿の格好よさと言ったら!ズンズンと響く重低音に乗せた彼の流れるような動きは実に美しく、スタントコーディネーターも大いに仕事を楽しんだことだろう。リアル寄りの『リベリオン』とでも言うべき芸術である。

ジョンは頭を撃ち抜くか、続けざまに二発以上の銃弾を放つことで的確に息の根を止める。これは何かの間違いで銃を手に戦うことになったときに参考になりそうなテクニックである。ある朝目覚めると殺し屋になっていたという可能性が無きにしも非ずである。ヴィゴ(ミカエル・ニクヴィスト)のように倒れた相手の腹に何発も撃ち込むのは格好悪い。

復讐譚ではあるが、ストーリーはあってないようなものである。ジョンのモチベーションの根幹として復讐があるが、それはストーリーというよりも設定に近い。一度仕事に取り掛かれば後は冷静に一人一人殺していくのみ。近年のアクション映画にしては珍しいほど長いカットを交えたスタイリッシュな映像を心ゆくまで堪能するばかりである(人の動きとカメラの動きを計算し尽くすのは楽しくも骨の折れる作業だろう)。復讐の相手であるヨセフ(アルフィー・アレン)に対しても殊更説教するようなこともなく、あっさりと頭を撃ち抜く。普通は殺す前に恨み言の一つや二つ言いそうなものなのに。

この冷徹さ、余計なことをしない点が本作を特徴づけていると言えるだろう。ジョンの動きにもストーリーにも無駄がない。それでいて、冷静に考えれば一人暗殺すればよいだけなのに正面突破を図って大量虐殺するという壮大な無駄をやらかしているのが面白い。アクション以外の無駄は削ぎ落とすが、アクションを魅せるための無駄はむしろ積極的に取り入れている。

ジョン・ウィックを見ているだけでも中二病ボルテージがマックスなのに、彼の住む殺し屋の世界でゲージが振り切れる。殺し屋専用の金貨やホテル、ディナーの予約(=清掃業者)、そして殺し屋の掟といった“ありえそうな”要素が中二心をくすぐりまくる。家のコンクリートの床の下に武器を隠してあるというのも格好いい。ハンマーを振り下ろさないと使えないのは不便だろうが、ジョンの封印されたキャリアを解放するメタファーにもなっていて、目つきの変わったジョンにワクワクが止まらない。

ジョンは左腕に内向きに時計をつけている。どういう意図なのかは分からないが、これは簡単に真似できる。これで明日から気分だけは伝説の殺し屋である。彼が着用しているのはカール F. ブヘラというブランドのマネロ オートデイトというモデルらしいが、これは真似できそうにない。お値段は35万円ほど。

ジョンが痛み止めの代わりに飲んでいるボトルが格好いい酒の銘柄はブラントン。こちらはなんとか手の出そうな価格(約6000円)だが、三十郎氏はバーボン党ではないのである。バーで見かけたら飲んでみよう。