オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『マトリックス レボリューションズ』

The Matrix Revolutions, 129min

監督:ウォシャウスキー兄弟(当時) 出演:キアヌ・リーブスキャリー=アン・モス

★★★★

概要

ネオがスミスと決闘する話。

短評

前作に引き続き本作も公開自体が事件であった。全世界同時刻公開と聞いて大いに驚いたものである。全世界同日公開はたまにあるが、同時刻となると他に例はあるのだろうか。日本の公開時刻は夜の11時であったと記憶している。当時の三十郎氏は高校生である。レイトショーには入場できない。しかし、観に行ったのである。高校生の三十郎氏が老け顔だったのか映画館の人が無関心だったのかは、過ぎ去りし過去における知る必要のない事実だが、兎にも角にも観に行ったのである。翌日、友人たちは誰もまだ観ていない。頭の中がクエスチョンマークだらけだった三十郎氏は映画の話がしたくて仕方がないのにできなくて、とにかくウズウズしていた。

感想

コンピューターのことを理解していなくてもストーリーの表面を追うだけで楽しめた一作目。話がよく分からなくても映画の射程を広げてくれた二作目。そして、完全に三十郎氏を置き去りにした三作目である。もはや表面を追うだけで楽しめる親切な映画ではない。相変わらず、いや、更にアクションシーンは凄みを増したと言ってもよいが、結局どういうことなのか納得できずモヤモヤさせられたままシリーズが完結してしまった。

映画のクライマックスでネオがスミスとの決闘した結果、両者が消滅する。ここまでは分かる。彼らは正と負の関係なので(バットマンがいなければジョーカーもいないようなもの)、どちらかがいなくなればもう片方も消滅する。これによりスミスの増殖に難儀していたデウス・エクス・マキナとの約束が果たされ、ザイオンへの攻撃が止まる。ハッピーエンドである。

疑問の根本はもう少し前に遡る。ネオの現実世界での覚醒はどういうことなのか。これには三通りの解釈が考えられる。第一に、彼は救世主なので超能力が使えるようになったというもの。物語の表面を追って楽しむことに徹するのならこれでもよい気がするが、マトリックス的とは言い難い。第二に、スミスが現実世界に侵食してきたように、ネオも何らかの形で現実世界からコンピューターへアクセスできるようになったというもの。これがもっともらしい解釈な気もするが、その方法について一切言及がないので何とも言い難い。「何らかの形って何だよ」となるし、論理の飛躍もある。第三に、現実世界だと思っている世界もまた仮想空間であるというもの。ネオのアバターを操るアンダーソンのアバターを操る別の階層の人間がいる。その人間もアバターであり、他の誰かに操られているのかもしれない。現実世界と仮想空間に本質的な差異がないというのは、なんともマトリックス的である。

仮に第三の解釈を採用した場合、ちょっと困ったことになる。ハッピーエンドがハッピーエンドでなくなってしまう。ここまでの戦いは何だったのか。こうなると第一の解釈でよいのではという気もしてくる。救世主が奇跡を起こして復活を望まれるというのはキリスト教的でアメリカ人が考えそうである。腑に落ち且つ結末に納得のいく解釈は何かないのだろうか。できれば三十郎氏の如き阿呆でも理解できるレベルで。

前作ではお披露目だけだったパワードスーツが本作では大活躍である。スタイリッシュな仮想空間での戦いとは対称的に生々しい感じがロマンを感じさせる。三十郎氏はパワードスーツが好きである。ただ、本作のパワードスーツは格好いいが、生身の操縦者に対する防御機構が全くないというのはデザイン上の欠陥ではないか。また、ザイオンが対センチネル戦で最も有効なEMPを使用できない構造になっているのは少々間抜けではないか。この辺りはプログラムの知識がない三十郎氏にもツッコみやすい。

意味不明だしツッコみどころもある割には三十郎氏内での評価が高い理由は思い出補正である。これは認めざるを得ない。なんだかんだで好きなのである。今ではCGのおかげでアイアンマンたちが当たり前のように空中で戦っているが、当時はこれも新鮮だった。その映像美が色褪せているとは思わないし、その時の興奮を覚えている身としてはどうしても嫌いになれない。ラストバトルのお互いが相手に向かって走り出すなんてバカげたシーンまでとっても格好いいではないか。昨今のアクションシーンはスピード感ばかりが重視されている気がするが、格闘シーンの中にスローモーションを混ぜると格好よくなることを本作は思い出させてくれる。

ラクル役の女優が交代してしまったのは非常に残念だった。彼女の優しく全てを見透かしたような表情が好きだったのに。

久し振りに観ると、このシリーズが持つ圧倒的な熱量に驚かされる。三十郎氏の中で俄にマトリックス熱が高まってきた。こんなことなら、先日500円セールになっていたアマゾンの配信版を買っておけばよかった。果たして、製作が決定した『マトリックス4(仮)』はどのようなものになるのだろうか。仮に裏切られる結果になろうとも、どうしても期待せずにはいられない。チョロい観客である。三十郎氏のようなチョロい観客ばかりだから、続編映画ばかりが製作されるのである。