オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『スター・トレックVIII ファースト・コンタクト』

Star Trek: First Contact, 110min

監督:ジョナサン・フレイクス 出演:パトリック・スチュワート、ジョナサン・フレイクス

★★

概要

地球人とエイリアンの初めての出会いをサポートする話。

あらすじ

惑星連邦の最大の敵であるボーグが地球に侵攻してきた。ピカードはかつてボーグに捕らえられ同化された過去を持つため迎撃任務から外されるが、シリーズの慣例に倣い命令を無視して迎撃に参加。見事ボーグ・キューブを撃破するも、脱出したボーグ・スフィアがタイムトラベルして地球の歴史を変えようとする。エンタープライズ号もタイムトラベルして後を追う。

感想

ボーグが最強の敵であるということやピカードとの因縁自体は一応の説明があるものの、それだけでは話について行けないというか入り込めない。恐らくドラマ版のファンにとっては既知の存在であり、長々と説明するようなことではないのだろう。しかし、三十郎氏のような映画版しか観ていない者にとっては不親切である。

これはジレンマである。三十郎氏にも分かるような親切設計にすれば、スター・トレックの世界をよく知るファンにとっては“バカでも分かるように作られた”間抜けな映画となってしまうのだろう。万人向けというのは、ある程度面白さとのトレードオフで成立している。一方で、三十郎氏は作品の本来の面白さが分からないままになってしまう。映画からドラマに逆流できるほど好きにはなれない。

これは現代の映画界にも通じる由々しき問題である。これまでは(スピンオフはあれど)映画化作品だけで完結してきたMCUスター・ウォーズの正史に、今後はドラマ化作品が加わる予定である。正直なところ、三十郎氏はついて行く自信がない。というよりも、ついて行く気になれない。作品を面白くするよりも配信プラットフォームで覇権を握りたいという目的が透けずとも見えるのも気に食わないが、単純に“観なくてはいけない”量が増えすぎると面倒である。

今後のMCUスター・ウォーズは、スター・トレックのように「ドラマを観ていないからよく分からない」という観客が増えていくのだろうか。「よく分からない」という観客と「面白さが分からないのは他の作品を全部観ていないから」という先鋭化したファンの対立を深めるのは映画にとってはマイナスだと思うのだが、既にこれだけ作品が増えてしまっているのならば、新規客の取り込みを狙うよりも既存客の囲い込みを狙うのがビジネス的な正解なのだろうか。

閑話休題スター・トレックはタイムトラベルがお好きなようである。そしてタイムトラベルが普及した世界のようである。『故郷への長い道』のようにカジュアルな展開なら気にならないが、歴史改変を防ぐというシリアスな目的であればタイムパラドックスが気になる。タイムトラベルを簡単に実行でき、またそれにより歴史を変えられるのなら、現在起きていることが全て無意味になってしまわないだろうか。その陳腐化を防ぐために他の映画ではタイムパラドックスが存在し、タイムトラベルによる過去改変は基本的に御法度ということになっているはずである。これは3以降のターミネーターが失敗している根本的な原因でもあると思う。

ストーリーの展開は二つの軸に分かれてテンポが良いし、アクションシーンも多め、ボーグの機械的でおどろおどろしいビジュアルも良い(ボーグ・クイーンの頭が身体に接続されるシーンは特に良い)。それでも今ひとつ面白いと思えなかったのは、ボーグという存在を掴み切れなかったためだろう。旧シリーズで面白いと感じた作品は、単体として成立しているか、映画シリーズ内で話が完結しているものだったように思う。