オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『スタートレックVI 未知の世界』

Star Trek VI: The Undiscovered Country, 109min

監督:ニコラス・メイヤー 出演:ウィリアム・シャトナーレナード・ニモイ

★★★

概要

惑星連邦とクリンゴン帝国が全面戦争の危機を迎える話。

短評

惑星連邦とクリンゴン帝国の歴史的和平成立のはずが、何者かの陰謀に巻き込まれて逆に全面戦争直前となる話である。暗殺、陰謀、ミステリー、戦闘要素と盛り沢山で、これまでにないほどスリリングな仕上がりとなっている。ちゃんと先の展開が気になる話なので、少なくともスターゲートの如き睡眠導入効果はない。

あらすじ

惑星連邦との交渉役であるグリンゴンのゴルゴン総裁のエスコート役を押し付けられたカーク。グリンゴンに息子を殺された過去を持つ彼は不満である。そもそも和平にも反対である。「奴らはケダモノだ。信用できん」と憤りながらも、大人気ないギクシャクしたエスコート役をこなしていると、グリンゴンの船が攻撃され、ゴルゴン総裁が暗殺される。和平から一転して、カークは暗殺の容疑者である。

感想

悪事を全てグリンゴンのせいにしてしまわない展開が良かった。カークをはじめとするエンタープライズ号乗組員たちのグリンゴンへの差別意識は目に余るところがあるので、片方だけを悪役にしてしまうと和平というテーマに合わない。グリンゴンにも悪い奴はいるが、連邦にも悪い奴がいる。その“悪さ”にも裏があって、両者がいがみ合うことにより利益を得ている者は平和になってしまうと困るのである。対立というものは、利用されるために生み出されるのである。冷戦終結という時代に相応しいテーマである。ただ残念なことに、目先の利益が失われたとしても新たな敵が生まれる(又は生まれたことにする)のは現実でも同じである。

クリンゴンのチャン将軍役としてクリストファー・プラマーが出演しており、特殊メイクをしていても抜群の存在感を放っていた。他にもクリスチャン・スレーターがちょい役で出演している。登場シーンでは影になっていて顔が映らないのだが、彼が既に人気だったのでサプライズ要素にしたということだろうか。影として現れる時点では事件を予感させるミスリードになっている。

本作がカークの物語としては最後になる。次作からは新たなキャラクターを迎えた新シリーズらしい。ここまでの作品を観て気付いたことは、物語としての太い軸や全体として向かう方向性の欠如が三十郎氏の好みに合わないということだろうか。元がテレビシリーズということもあり、新たな星を探しに行ったり、敵が登場すれば延々と話を続けられる。スター・ウォーズのEP1~6がスカイウォーカーの物語として一貫していたのに対し、スター・トレックはクエスト形式のゲームのような印象である。全体としてドラマを構成しておらず、いつも降り掛かった事態に対処している。

一方で、未知の宇宙への冒険にはロマンがある。果てしなき開拓というテーマがアメリカ人の心を捉えて放さないというのは想像に難くない。また、カークを中心として、彼の行けない範囲外までは話が広がらないというインフレ制御は良かったと思う(インフレについてはMCUが危うい状況にある)。

シリーズの最終作らしく映画のラストでファンへの別れの台詞とも取れる言葉を発するカーク。良いことを言っている風ではあるが、「冒険は次の世代へと引き継がれる」と言っておきながら、帰投命令を無視してエンタープライズ号で逃亡するとは何事か。船を返せよ。精神だけではなく物理的にも引き継げよ。