オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ボン・ボヤージュ 家族旅行は大暴走』

À fond(Full Speed), 91min

監督:ニコラス・ブナム 出演:ジョゼ・ガルシア、カロリーヌ・ヴィニョ

★★★

概要

高速道路を爆走する話。

短評

自動車の速度自動制御システムが故障して強制的に『スピード』させられる話である。最新のテクノロジーに対する不安を描くようなものではなく、単なる阿呆なコメディ映画である。やってる事が阿呆なら、登場人物も皆阿呆である。小難しいイメージのついているフランス映画だが(原因はゴダールか否か)、ハリウッド同様にバカをやるだけのコメディ映画も意外に多い。と言っても、三十郎氏の知っている他のフランス製阿呆コメディであるヒャッハー・シリーズも本作も、監督は同じニコラ・ブナムである。

あらすじ

一家がバカンスへと向かう道中で新車が故障する。ただそれだけのシチュエーション・コメディである。手に汗握るアクション・スリラーになりそうなところだが、登場人物は皆阿呆なので、緊迫した状況でもバカばかりやっている。

夫トムと妻ジュリアに息子ノエと娘リゾンという四人家族に超弩級の阿呆祖父ベンが加わった五人が旅の仲間である。そこに阿呆かつ助平祖父ベンが連れ込んだ女性メロディ(設定的には少女っぽいが外見は完全に大人の女性。演じているのはシャルロット・ガブリ)を加えた六人が暴走自動車の乗客である。

感想

ベンがとにかく阿呆である。恋人にフラれては息子一家の厄介になり(そのためジュリアには嫌われている)、出発直前にトイレを詰まらせて階下に漏水させ、勝手に女を連れ込み、パンツに見惚れて事故りかけ(これは同情の余地がある)、息子の仕事の仕入先を勝手に変えて差額を横領し、車が故障していなくても190kmで爆走する。とんでもないクソジジイである。不快と紙一重の不快側なのだが、自分の身に降り掛かってこない災難というのは笑えるもので、三十郎氏はこのベンが好きになった(『ハングオーバー!』のアランを好きになるのと似ている)。自分の祖父や父がこのような人でなくてよかったとは思う。

ベン以外にもトム、ジュリア、BMWを壊された男、警察と阿呆揃いなので笑える要素には苦労しない。風刺のような気の利いた笑いは一切ないが、ベタな笑いに満ちている。BMWを壊された男は不運で気の毒だが、彼は一歩間違えば『デッドコースター』的な死に方をしていてもおかしくなかったので、実は幸運なのかもしれない。

阿呆一辺倒のコメディ映画なのだが、暴走シーンは意外にもスリリングだし、最後の救出劇は迫力がある。ちなみに、暴走の様子や救出劇を中継するテレビ局のリポーターのお姉さん(Hortense Gélinet)が美人。

暴走する車を止めるべく手を打つと全てが裏目に出て、どんどん車が壊れていく。ブレーキペダルも折れる。あれだけ車内を破壊すると、後日、自動車メーカーが責任逃れする口実を与えることにならないのだろうか。

本作では絵画でしか見られないジュリアの“フランスの乳房”は他の映画で拝見できるのだろうか。フランスの女優はだいたい脱いでいるという偏見があるが果たして。