オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『怪物はささやく』

A Monster Calls, 108min

監督:フアン・アントニオ・バヨナ 出演:フェリシティ・ジョーンズリーアム・ニーソン

★★★

概要

イチイの木の怪物が少年に物語る話。

短評

舞台はイギリスだが、監督のフアン・アントニオ・バヨナはスペイン人。スペインはダーク・ファンタジー大国である。最も有名な『パンズ・ラビリンス』と同じく、少年が過酷な現実を受容する手段としてファンタジーの世界が用いられている。『パンズ・ラビリンス』は、そうせざるを得ない状況に追い込まれる物語であり、結末も厳しいものであったが、本作はファンタジーの出現理由や結末に優しさや希望がある。

あらすじ

病気で衰弱する母を持つ少年コナーのもとにイチイの木の怪物(リーアム・ニーソン)がやって来る。怪物は語る──「私が三つの物語を語るから、お前が四つ目を話せ」。

怪物の語る物語は、一つ目は「二面性」、二つ目は「信念」、三つ目は「孤独」について暗示するような内容である。一つ目と二つ目の物語で水彩画で描写され、コナーが想像を膨らませることを強要されるのに対し、三つ目の物語はコナーの生活を侵食する内容である。

感想

怪物の正体はコナーの夢または妄想である(コナーは悪夢として認識している)。コナーの母リジーフェリシティ・ジョーンズ)がどんどん弱っていくため、これは少年が母の死を受け入れるために創り出した幻想なのだろうと推察できるが、結末はもっと感動的なものであった。少年自身が創造した物語ならば、少年を困惑させたり、少年が意味を理解できないような少々難解な物語を語りはしない。もっと都合の良い妄想をしてもよいはずである。

映画の最後に明かされるのは、これは母リジーの生み出した物語だったということである。コナーが祖母の家で、元は母の部屋であったであろう自分の部屋に入ると、机に一冊のノートが置かれている。そこに描かれていたのは、怪物が語った物語の世界であった。きっとコナーも覚えていないような幼い頃に、母が自分の創った物語を語り聞かせてくれたのだろう。大切なことは既に母が教えてくれていた。それにより少年と母は救われる。映画の序盤に親子で『キング・コング』を観ているシーンは、母と共に見聞きした物語が少年を救うことの伏線だったのだろう。ところで、フィルムの『キング・コング』ってかなり希少なのでは?

ラストシーンは心温まるが、四つ目の物語、コナーの真実は見ているのがかなり辛かった。三十を超えた見ているだけのおじさんでも辛くなる、胸の痛くなる話である。当事者の少年には耐え難いものだろう。だからこそこのファンタジーが必要なのである。

怪物はささやく(字幕版)

怪物はささやく(字幕版)

 
怪物はささやく

怪物はささやく