オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『スタートレックIII ミスター・スポックを探せ!』

Star Trek III: The Search for Spock, 105min

監督:レナード・ニモイ 出演:ウィリアム・シャトナーレナード・ニモイ

★★

概要

スポックがジェネシスの力で復活する話。

短評

スポックを生き返らせる(正確には、ジェネシスの影響で生まれ変わった肉体に魂を定着させる)というメインストーリーと、兵器としてのジェネシスを狙うクリンゴン人との攻防というサイドストーリーを並行して描いたシリーズ三作目。メインストーリーの方ではカークたちの仕事がほとんどないため、サイドストーリーで活劇的味付けをしているのだが、相変わらずスローテンポで起伏に欠ける物語である。

感想

死んだキャラクターを蘇らせることの是非については様々な見解があるだろうが、スポックを蘇らせてしまったことにより彼が前作で見せた自己犠牲の精神がスポイルされてしまったことは間違いないと思う。人気キャラクターを今後も使い続けたいという製作側の事情もあるのだろうが、本作の監督を務めているのがスポックを演じるレナード・ニモイ本人だというのだから「もう好きにしたらいいよ……」という気分になる。

前作ではスポックの論理性が利他的行動に帰結していたが、彼本人が利他的というわけではないらしい。バルカン人は死ぬ直前に他人へ魂(カトラ)を移すことができる(データのバックアップを取っているようである)。魂を移されたマッコイは精神に異常を来しており、また彼は事前に了解しているわけでもない。迷惑かつ自己中心的な話ではないか。スポックを生き返らせるという目的のために彼のキャラクターが随分と毀損されているような気がするのだが、本当にこれでよかったのか。

スポックの命は何よりも重い。エンタープライズ号よりも重い。前作までは提督の権力を濫用して艦長の椅子に座ってきたカークだが、本作では惑星ジェネシスへの接近禁止を指示されたためにエンタープライズ号を強奪する。その結果、エンタープライズ号は爆散する。シリーズの象徴かと思われたエンタープライズ号を破壊してでもスポックを救わねばならんというのは、カークのスポックへの愛ゆえか、それとも監督のスポックへの愛ゆえか。これまでは権力を笠に着て好き放題してきたカークだが、命令無視の末に船を失ったとなれば、次作では提督の身分が剥奪され、収監されているか海賊化しているかのどちらかだろう。

惑星ジェネシスと同じく劇中で一気に老け込んだ新スポックは、このまま老衰して寿命を迎えるまで一直線とはならないのだろうか。

これまでのところ、三十郎氏が本シリーズにおいて唯一気に入っている要素が音楽なのだが、格闘シーンでは何故か劇伴がないために非常に間延びした印象を受ける。話が平坦なのだから、せめて盛り上げ方に工夫を。