オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『エイリアン』

Alien, 116min

監督:リドリー・スコット 出演:シガニー・ウィーバーイアン・ホルム

★★★★★

概要

宇宙船がエイリアンに襲われる話。

短評

恐怖の作法』という本には「本当に怖いものは幽霊か呪いしかない」というような主張が記されているのだが、あれは嘘である。だって『エイリアン』は怖いんだもの。得体の知れない未知の惑星に降り立つのも怖いし、エイリアンの謎多き生態系も怖い。じりじりと迫り来る存在感も怖ければ、姿を見せた時のおどろおどろしさも怖い。『エイリアン』はとっても怖い。モンスターの出てくる映画はパニック映画に終始しがちだが、本作は完璧にホラー映画である。「何が怖いのか」という設定上の問題にこだわるよりも、映画の世界に没入させて主人公が感じる恐怖に共感させることが重要なのである。

感想

舞台の雰囲気が最高である。映画の冒頭、薄暗く誰もいない宇宙船の内部を長々とカメラが捉え続ける。「どうだ!完璧に作り上げた見事なセットを刮目せよ!」と言わんばかりである。細部までこだわり抜かれたノストロモ号は、それだけでこのSF映画の世界をリアルなものに感じさせてくれる。この時点で三十郎氏のハートは鷲掴みである。

惑星に遺棄された宇宙船の外観、その内部に遺された化石化したスペースジョッキー、そしてもちろんエイリアンのデザインも全てがグロテスクでかつ美しい。エイリアンよりも魅力的なデザインのエイリアンは果たして存在するのだろうか。今後、現れることがあるのだろうか。エイリアンをデザインしたH・R・ギーガーについて知りたい人は、彼を追ったドキュメンタリー映画DARK STAR/H・R・ギーガーの世界』をどうぞ。彼の世界はエイリアンの口以上に直接的に性的である。彼の幻想的な世界とリアリティに折り合いをつけさせたリドリー・スコットの手腕も見事である。

モンスター映画史上屈指の外観を誇るエイリアンを得ておきながら、その登場を最小限に留めるという決断が凄い。三十郎氏が監督ならもっと見せびらかしたくなってしまうことだろう。「ここも見て!顔だけじゃなくて尻尾も胴体も格好いいでしょ」と自慢げに全身を披露して、エイリアンから神秘性を奪ってしまうに違いない。更に凄いのは、出番が少ないからと言って不満を感じさせないほどに、口の機構をはじめとするエイリアンのデザインが強烈なインパクトを残すことである。

ホラー映画というジャンルと宇宙という舞台がここまで相性が良いとは。“逃げ場がない”という設定上の強みに加えて、宇宙は未知の空間である。得体の知れなさや神秘性が、モンスターの存在にリアリティをもたらす。ありえないことがありうると思わせてくれる。きっと心霊もののホラー映画も宇宙船と相性が良いだろう。既に製作されていそうだがどうなのだろう。

本作のリプリーは無敵の女ではない。船長には邪険にされ、部下には指示を無視される。はっきり言って“なめられている”。彼女がエイリアンに立ち向かう勇敢な女性であることは間違いないが、ヒーロー的でない等身大の人物が直面する事態だからこそ、彼女の感じる恐怖に共感できたと思う。

ところで、『オデッセイ』では宇宙船では火気厳禁と言っていなかっただろうか。火星基地のことだったかな。『エイリアン』の方が未来の話なので、きっと宇宙船も耐火仕様になっているのだろう。しかしながら、ブレットが殺されるときには雨のように水が降っている。あの水漏れは放置しておいてもよいのだろうか。

エイリアン (字幕版)

エイリアン (字幕版)