オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ロスト・アイズ』

Los ojos de Julia(Julia's Eyes), 117min

監督:ギレム・モラレス 出演:ベレン・ルエダ 脚本:オリオル・パウロ

★★★

概要

視力を失う女性を襲う何かの話。

短評

スペイン製のホラー映画、いや、スリラー映画である。序盤はホラーで終盤はスリラーという構成なので、真実が分かってみればスリラーであったということにしておこう。

あらすじ

失明した姉サラが首を吊った。自殺の経緯に疑問を感じる妹フリアもまたサラと同じ病に侵されており、視力を失いつつある。自殺前のサラの行動を追うフリアに怪しい影が迫る。

感想

序盤はホラーとしてちゃんと怖いし、終盤はスリラーとしてドキドキできる。個別に見れば両方とも良いのだが、両者の繋がりの部分は上手くいっていないように感じた。物理的に“見えない”こと、心理的に“見ようとしない”こと、そして“見られない”ことが抽象的に処理されている内は物語として面白いのだが、正体がノーマン・ベイツ的な男であると判明してしまえば、それは少々具体的過ぎる。それもオチに持ってきていないので、恐怖の対象が散漫になった印象が残る。

周囲の人間に気付かれない、いないも同然の透明人間が概念であればよいが、一人の人間となれば少々無理がある。透明人間的であるが故に自由に行動できるというのはやり過ぎである。そのような人間の社会へ向ける怒りも単なる理不尽に映る。これが抽象的なまま処理されていれば、“疎外された存在の社会への怒り”は現実でも恐怖を感じさせる素材になりそうなのに。

気に入った演出が二つ。一つは、フリアが手術後に出会った人の顔が見えないようにされているもの。顔の見えない相手というのはそれだけで不気味である。この顔の見えない相手が「こいつは多分ヤバい奴だぞ」と感じさせて怖いのだが、正体不明の恐怖の対象が一人の人間へと収束していく過程でもあるので、演出は好きなのに物語に占める役割は好きではないという割り切れない思いがある。

もう一つは、電気を消した暗闇でカメラのストロボを使うもの。これは怖い。懐中電灯を振り回すよりも、一瞬の閃光の連続はカメラの捉えた映像を強烈に目に焼き付ける。“対象が”見えない→見えるの連続よりも、“何も”見えない→見えるの変化の方が抑揚が利いていて緊迫感がある。

話の展開には細かい疑問の多い映画なのだが、フリアの担当医はどうして退院を許可したのかが全くもって解せない。

眼球に注射するシーンはとても痛い。痛そうと言うよりも痛い。

ロスト・アイズ(字幕版)

ロスト・アイズ(字幕版)